紫野高校のアカデミア科は長らく英語面接を行っていたところ、令和6年度(2024年度)入試より、日本語による面接に変更されました。これについて、紫野アカデミアを目指す生徒が考えなければならないことを書いておきましょう。
紫野高校から出ている資料、そして説明会における説明をもとに、塾の見解を考えてみました。まずは資料をちゃんと読んでおくことが大切です。
・紫野高校アカデミア科 面接資料 (ソース元の紫野高校サイトは常時SSL化されてないので塾のサーバーにアップすることにしました)
最後には「この面接をうまくクリアするためのコツ」を記述しておくので、特に受験生はよく読んでおきなさい。
アカデミア科による面接の配点は、表から分かる通り500点満点の中で40点です。つまり面接点は、合否を決める戦いの中において、ちょうど8%を占める重要性です。
国語 | 数学 | 英語 | 理科 | 社会 | 報告書 | 面接 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
紫野 アカデミア | 120 | 120 | 120 | – | – | 100 | 40 | 500 |
普通、他の高校でもだいたいそれくらいの比重なので、本来はアカデミア科の面接のみ特筆すべき理由はありません。しかし、他の高校の面接は「中学時代に頑張ったこと」「高校で頑張りたいこと」など一般的なテーマでの受け答えとなる一方、アカデミア科の面接はむしろそのような質問は一切なく、社会的テーマに関する受験生の考えを問う面接です。
したがって、一般的な “高校受験の面接対策” とは別種の対策と準備が求められることになります。
また、高校側でこういったテーマを設定する以上、受験生ごとの点数のバラツキが大きくなりやすいです。例えば一般的な高校受験の面接であった場合、たとえ合格の8%を占める重要性があったとしても、ある程度練習し、元気よく受け答えすれば全員が平均点に収束してゆく可能性が高いです。
紫野アカデミア科の場合はそれに加え、渡された資料を読んで考えたことを根拠を持って話すほか、アイディアや見つけた課題を伝えなければならないため、その点の課題発見力や発想力に関して得点を与える項目が設定されます。面接を行う側からすると、ここで受験生でポイントの差をつけやすくなっています。
下の表は、面接を実施する京都市内の専門学科をまとめたリストです。検査内容を見ても、アカデミア科は少し異質であることが分かります。
高校/コース | 検査方式 | 配点比率※ | 検査時間 | 検査内容 |
---|---|---|---|---|
嵯峨野 こすもす | 面接 | 4.8% | 10分 | 集団面接。「京都こすもす科自己PRシート」をもとに、本校への志望理由、将来の夢や目標等について口頭で答える。 |
西京 エンプラA2 | 双方 | 13.3% | 計45分 | 面接…個人面接を実施する。志望動機や高校生活に向けた決意等を問う。5分 小論文…A1と同じ。40分 |
桃山 自然科学 | 面接 | 4.8% | 15分 | 集団面接。志望動機や入学後の抱負等についての面接者からの質問に口頭で答える。 |
山城 文理総合 | 面接 | 4.8% | 10分 | 集団面接。面接者からの質問に口頭で答える。本校文理総合科の「求める生徒像」で示した内容に関する目的意識や意欲・適性をみる。 |
紫野 アカデミア | 面接 | 8% | 5分 | 個人面接(日本語)。・写真、文章、図表などの資料を見て、持続可能な社会の実現に向けて、自分なりに考えをまとめ、3〜4問の質問に答える。・地球上の諸課題を自分ごととして受け止め、複数の物事を関連づけて考えた上で、自由闊達に意見を述べる素養を見る。 |
工学院 フロンティア | 面接 | 5.2% | 10分 | 個人面接。中学校での活動や志望動機、高校生活への抱負等を具体的に聞き取る。 |
面接を行う側としても、特殊なものを設定して受験生の適正を問いたいわけなので、「ほぼ全員が平均点が取れる」ような面接にはしないと考えることが自然です。
具体的な面接内容を、前掲の資料に沿ってまとめておきます。
1. 資料を見て考える(20分予定)
準備室に案内されると、封筒が渡されます。

中に入っている資料を見て、20分間それについて考えます。
封筒から、下記を取り出します。
- 複数の資料(写真や文章、図表など)
- 課題が書かれた紙
- メモ用紙

複数の資料を見て、「持続可能な社会の実現」という観点から、課題について考えます。この際、メモ用紙に自分のアイディアや思考を書くことができます(資料や課題には何も書き込んではいけない)。

係の指示に従って、資料と課題を封筒に戻し、返却する。そして、メモ用紙だけを持って面接室に移動します。
2. 個人面接(5分予定)
面接は、受験生が1名に対して面接官が2名。受験生の目の前には、準備室と全く同じ資料が並べられています。

資料に関する面接官からの質問に答えます。この際、メモ用紙を見ても問題ありません。質問は3~4問、面接終了後にメモ用紙を面接官に提出します。
面接は5分間の予定なので、あっさり終了するでしょう。
紫野高校からの提示及び今までのテーマ、その模範解答は別ページにまとめています。受験を考える人はよく読んでおいてください。


ここで、具体的にできる面接対策を記しておきましょう。紫野高校は資料と説明会にてSDGsに関連するテーマを出す、としつこく告知しているので、それに伴った思考トレーニングがおすすめです(ただし、それに直結するテーマであるとは限りません)。
アカデミア科の募集要項では、面接の検査内容欄に『持続可能な社会の実現に向けて、自分なりの考えをまとめ』『地球上の諸課題を自分ごととして受け止め』等と書かれています。この募集要項は毎年コロコロ変わるものではないので、しばらくはこの方針で面接が行われるでしょう。

『持続可能な社会』『地球上の諸課題』と言ったら、そのまんま国連が定めているSDGsのことを指すのが普通です。実際にアカデミア科の説明会などでも、この言葉が触れられることが多いですし、それを基本テーマとして面接課題を出すと発表されています。
しかし、持続可能と言われてもイメージがつきにくい中学生が多いでしょう。
勉強に疲れたときでも良いので、ユニセフのサイトや動画は見ておいてください。
小中学生向けにSDGsについて作成されていて、とても見やすいサイトです。文章を読むのがしんどい人は、サイト内の動画を見ておきましょう。一つだけ抜粋しておきます。

5つくらいはピックアップして、ユニセフのサイトをよく読んでおくことが大切です。ユニセフのサイトでは、ゴール一つ一つに詳しいページが用意されています。例えば、『1. 貧困をなくそう』はこんな感じです。

17のゴール全てに精通する必要はありません。関心あるものだけ、ちょっぴり詳しくなってください。
もう一度、紫野の資料を読んでみます。

上記のイラスト群は、SDGsの17ゴールのうち一部であるため、実際にそれを知らないと何も考えることができない可能性があります。ただ、実際の2024年面接のテーマは【京都について】であり、少し異なった趣向であったので、これを知らなくとも十分に対応できるものでした。
そうは言っても、余裕がある人は17のうち、たくさんのページを読んで「へ〜」と思っておきましょう。勉強というより、リラックスタイムにユニセフのサイトを読んで楽しむ感じがベストです。それができていれば、課題がどんなものであれ、20分間のうちにしっかりとした考えをまとめることができますよ。
別に詳しく読まなくても、一見して「どういう意味だ?」と思われるゴールについては中身を知っておきたいところです。例えば12の「つくる責任、つかう責任」はパッと聞いただけでは何のことだか分かりません。そういうものはサッと目を通して意味を分かっておくとどんなテーマでも安心できます。
普通、高校生を対象にする面接においては、受験生の知識を問うことはしません。したがって実際の面接テーマでは、SDGs自体の知識を問われることはありませんし、仮にSDGsのことなど全く知らなくともしっかりと対応できる面接テーマになっているはずです。
ただ、一度SDGsをベースとして何かのテーマについて考えておくことがあれば、資料の関連付けなどの発想が浮かびやすくなります。下記のように、SDGs17ゴールのうち、何か自分で考えたことや感じたことがあるものはまとめておきましょう。

上記の例は受験生の中でもトップ層かなと思うくらい、かなり積極的に学んでくれた優秀な生徒のものです。ここまで詳しく考えてまとめなくても良いですが、参考にしてください。
いろいろな問題のデータを見ながら、一つ一つのテーマに対して自分が聞いたことがあること、自分で感じること、などをあらかじめ考えておくと、面接でどんな課題が出ても余裕を持って対応できます。
色々と書きましたが、「マジメに考えすぎて、面接対策ばっかりに気を取られるのも良くない」ことも忘れないでおきましょう。そんな時間があったら、ちょっとでも英語長文や数学をやるべきです。20分の準備のうちに発想できることだってあるので、全てを事前に済ませなくても良い。
募集要項に書いていたように、あくまでも「自由闊達に意見を述べる素養」が大前提として求められるものであって、知識がたくさんある人に高得点が与えられるわけではありません。

評価の観点を把握しておくことは、とっても大切です。
「SDGsなど、世界中の問題に対して深い知識を持っているか」とか、そんな観点では評価されません。最低限の準備があれば、あとは自分の意見を恐れることなくハッキリと述べ、「私はアカデミア科で学ぶのだ」という強い気持ちを見せることが1番大切なので、そこだけは忘れずに面接に挑みましょう。

- 知識をたくさん披露してくれるけど、ボソボソ聞きにくくて自信なさそうに話す受験生
- 全然何も知らなさそうだけど、明るくはっきり意見を伝えてくれる受験生
この両極端な2人の受験生がいた場合、面接官が高い評価を与えるのは2の受験生です。だから、SDGsを熱心に調べるのは、合計でも2~3時間くらいで十分です。それだけで、何も準備しないよりは大きく点数をアップさせることができます。
何が起こるか分からないし、もしかしたら全く想定外の資料を渡されるかもしれません。しかし、冷静になれば必ず対応できるから大丈夫。昨年度までの合格者も、「アカデミアの面接はとても楽しくできた!」と報告してくれました。トラブルも含め、あくまでも楽しむ気持ちを忘れないでいきましょう。
- SDGsの17のゴール、関心あるゴールを複数、ユニセフのサイトなどで調べてみたか?
- そのゴールに関して、日本や身の回りに関して起こっていることがないか、考えたり調べてみたか?
- その複数のゴールを関連づけて、何か高校でできそうなアイディアや、日本が行うべきことがないか考えたか?
- ゴールについてのデータを見てみて、「驚いたこと」「意外だったこと」「直すべきだと思ったこと」など、自分なりの感想をまとめておいたか?
このあたりのことだけ考えておいて、あとは過去の面接テーマを確認しておき、「自分だったらこう答えるだろう」と思った回答と模範解答とのギャップを埋めておくようにしてください。
