紫野高校は特にアカデミア科において、明らかに英語を推しています。実際に紫野高校は結構な人気であり、目指したいと思う生徒に理由を聞くと高確率で「英語が好きだから」と返答があります。
ただ、最もアカデミア科の合否を分けるのは、紛れもなく数学です。合格したいんだったら、数学に本気で向き合ってほしい。

まず愚痴から入ると、紫野アカデミアを志す生徒は「英語が好き」と答えてくれる割合が圧倒的に多く、それは素晴らしいことであるものの、「数学は苦手なんですけど」といった不要なセットがついてくることが多いです。なぜか分かりませんが、「英語がめっちゃ得意なんです!」と「数学も得意です」がついてくることが少ない。
しかし不思議なもので、逆に「数学が好きです」という生徒を考えてみると、「英語は苦手なんですけど」がセットでついてくることはあんまり多くはないのです。こういう傾向を考えると、基本的には受験5教科の中で、数学がキングであると考えていいでしょう。数学を粘り強く解く力があれば、他教科もできる可能性が高くなる。
これは、近年の大学受験の傾向を見ても明らかですね。京都で個別指導塾を運営していると、同志社大学とか立命館大学の学生が学生講師として求人広告に応募してくれるのですが、文系学部の学生のほとんどが、入試に数学を使っていないです。共通テストを受けて、あとは英語と国語と社会だけで有名私立大学に合格できてしまう時代の流れがあります。大学としても、入試で偏差値が落ちやすい数学をカットしてあげることで、大学の見た目の偏差値が上がるという不純な動機を指摘されることもあるくらいであって、これが「偏差値なんかアテにならない」ことの根拠になっています。
だから、同志社や立命館の大学生で「数学を教えることには自信がありますが、英語はそこまで自信がありません」と面接で伝えてくれたことは今まで一回も経験がありませんが、「英語は自信がありますが、数学は自信がありません」と答えてくれる人はめちゃくちゃ多いです。ナイスな性格でも、採用をためらう瞬間。
結論、「英語が好きです、得意なんです」と考える生徒が集まると、高確率でその中には「数学が苦手なんです」という生徒がたくさん含まれています。
もうお分かりかと思いますが、紫野アカデミア科を受験する生徒は圧倒的に「英語が好きです、得意です」という生徒が多いことから、一つの論理的帰結を導くことができますね。
紫野アカデミア科の受験者は、数学が苦手な人が多い
これは実感値としても紛れもない事実であって、どうしてもアカデミア科に合格したい受験生は、この事実を知っておく必要があります。
ある高校の合格を目指すとき、まず最初にその毎年の合格者はどれくらいの点数を取っているのかを知ることが大切です。下の記事でアカデミア科のデータをおさらいしてみましょう。

ある程度の評定を取っているのであれば、筆記試験では360点満点の6割(約215点)を取れれば合格の可能性が本格的に見えてきます(2024年時点までの蓄積データより)。7割を取れていたり、評定がよければさらに合格の可能性は高くなります。
では、6~7割とはどのようなものでしょうか?国数英、全3教科において同じ割合の点数を取ることは稀ですし、普通は得意教科で多く点数をとって、苦手教科の失点をうめていくような数字になります。
もちろんアカデミア科の合格者の典型例は、数学で取れなかった分を英語と国語でカバーすることがとても多いです。これは当日の結果だけでなく、そこに至るまでの毎月の模擬試験の結果を見ても、やはり多くの生徒は「数学を国英でカバーするタイプ」に分類されます。数学の偏差値は低いけど、国語と英語はいい感じだなぁ、という典型的タイプ。

アカデミア科を受験するとき、周りのライバルに数学を苦手とする生徒が多い場合、これは受験戦略に活用しなければなりません。数学が苦手であるということは、国語と英語に比べて数学の得点率が低くなっているのです。データを見ても実際そうだし、逆に、国語と英語はあまり差が出ていません。
こういう傾向はずっと続いてくるので何が起こるかというと、当然数学の問題はそこまでの応用問題を出しにくくなります。堀川探究とか嵯峨野こすもすとか、そういった問題のような難問はあまり出ません。
毎年、アカデミア科の問題を解くたびに、「ああ、たぶんアカデミア科の数学の先生も、受験者に数学が苦手な子が多いことを分かってるんだろうなぁ」と感じます。解いてみると、たしかに普通科の問題よりは難しいし、慣れていない生徒に解かせると「めちゃくちゃ難しかった」と感想を伝えてくれます。ただ、それは問題の系統が「いかにも専門学科っぽい」というカラーの問題であって、問われる知識は基本中の基本だけであったりします。
合格させなければならない立場としては、英語と国語、特に英語に関しては意欲の強い受験生が多いわけだし、あとはほっといたら逃げに走りがちな数学をビシバシ叩いて形にしてやらないといけない、と感じますね。
で、中学数学って多少の苦手意識があってもポイントを抑えたり、類題をたくさん解かせて解説を重ねていくとちゃんと伸びます。その代わり、苦手意識のある生徒にはこっちから働きかけ、つまり意気揚々と数学を楽しませる精神が求められてきます。
塾で具体的にやらせていることは、毎月の五ツ木京都模試の前に、模試の過去問を最低3年分を解かせ、全て解説を重ねていくことです。これで7月偏差値が40あたりでも年内に60以上に引っ張れます。

上記のような形で、過去問に全部解説を配って、それをもとに間違えた問題を解説することになります。土日のコアタイム(受験生が必ず教室にいなければならない時間)を使って過去問数年分をトレーニングして、そして本番に挑み、そのあとまた次の回の過去問を解いて…というスケジュール感。
五ツ木京都模試はベーシックな問題が多いですが、だからこそアカデミア科トレーニングにはうってつけであると、何年分も過去問を解いている立場からすると自信を持っておすすめします。過去問をやらなかったり、受けるだけの解きっぱなしは意味がないのでダメです。
五ツ木京都模試の数学レベルをしっかり解けるようになれば、あとはアカデミア科の過去問を10年分弱くらいやると、仕上がった状態で当日を迎えられますね。紫野の過去問も10年近くやった方がいいです。

数学をこういった形でしっかり伸ばしていけば、7割は取れると思いますし、実際に毎年は「もう7割取れるだろう」という気持ちで送り出すことを目的としています。
で、英語と国語は割と安定した得点を取れる生徒が多いので、数学で7割とって不合格になることはほぼないです。だから、アカデミア科にいきたければ、むしろ数学を伸ばすことを考えるべきでしょう。英語は放っておいても頑張るだろうし、国語も過去問を何年分も解いて、解説を受けていけば合格点は取りやすいです。
今回は「紫野アカデミア科に合格したいです」といって入塾してくる生徒に出会って、まず考えることを書きました。ほとんど全員を見て、数学を伸ばしてやらないとダメだなって思います。
怖いのは、アカデミア科がもはや私立大学みたいに振り切ってしまって、「入試問題は、英語と国語だけにします」とかロックなことを言い出さないかどうかです。