【ケーススタディ】紫野アカデミア:遅れをとった受験対策、併願私立で不合格でも合格を勝ち取った事例

ケーススタディとは、個別具体的な事例(ケース)を研究(スタディ)することで、そこから得られるヒントや法則を見つけるための学習です。


高倉塾では長年、京都府の高校受験をサポートしています。その中でも典型的なケースをピックアップし、そこで得られた知見をケーススタディとして紹介します。受験生は参考にしてください。

事前に読んでおくべきもの

紫野高校 アカデミア科の合格点の計算方法を把握しておいてください。

【専門学科】公立高校の難関コース入試制度を解説。堀川探究、嵯峨野こすもす等

Aさんのプロフィール

今回はAさんのケースを紹介します。

中3秋に高倉塾に入塾

A さんの入塾時期は遅く、中3の秋頃です。良くあるパターンですが、中1からずっと大手進学塾にて頑張ってきたものの、授業が分からない状態が続くため塾を変えることを決意。入試までギリギリのタイミングではありますが、まだ中3を受ける余力もあったので高倉塾でできる限りのことをやろう、ということでスタートしました。


もちろん、以前からずっと通っている生徒以上の勉強時間や受講が条件になります。

評定はまずまずで英語が得意

「前の塾の授業は全然ついていけなかった」と言っていたAさんでしたが、学校の評定は悪くありませんでした。

評定数学英語理科社会国語音楽美術保体技家合計
1年学年末45443433333
2年学年末55444443336
3年12月末45445443336
3年間
合計
105
圧縮後78

Aさんは自主性のある生徒だったので、定期テスト前は塾を休んでテスト対策に集中していたようです(何のための塾)。入塾は中3秋だったため、あまり評定について貢献できる部分もありませんでしたが、圧縮後78は、良くもないが悪くもない数字です。


場合によっては堀川探究や嵯峨野こすもすも合格できるレベルですし、受験を妨げるものにはならないでしょう。

紫野アカデミア志望だが猛烈に自信がない

Aさんは英語が好きであったこともあり、入塾前の面談にて、志望校は紫野高校であると伝えてくれました。その際、「コースは?」と聞くと、少し考えて「普通科です」と答えてくれました。しかし、良く話を聞くと、実はアカデミア科に行きたいが、自信がないから普通科にしようと考えている、何度も見た典型パターンであることがすぐに分かりました。


もう受験も迫る時期であったため、入塾後も志望校については引き続き話し合い、結局はアカデミア科にチャレンジすることになりました。

ハイレベルな高校を受験させるということ

もしAさんが、「アカデミアと普通科を良く比較してみた結果、やはり普通科に行きたい」と考えていたのであれば、偏差値が高いからといってアカデミアを受けてはいけませんし、親や塾が無理に勧めてもいけません。そういう決め方は入学後のモチベーションだったり信頼関係だったり、いろんなものを失います。


したがって塾としては、「本当に普通科に行きたいのか、もしくは自信のなさからそう言っているのか」を判断しなければなりません。そして、それがもし後者であれば、良く話し合ってチャレンジを後押しなければなりません。

A さんの課題

an equestrian in action

さて紫野高校のアカデミア科を目指して張り切っていきたいところですが、大きな課題がありました。

中3秋時点で基礎学力がグラグラ

Aさんは評定は悪くないものの、専門学科受験に当たって求められる基礎学力がぐらついた状態での入塾で、とても難しい戦いが予想されました。進学塾に通ってから転塾を希望する生徒のほとんどが該当するパターンです。

  • 学校の成績はよくとも、特に1~2年の範囲はあんまり覚えてない
  • 数学や理科の応用問題には手も足も出ない

こういった状況を短期間で克服するためには、勉強時間の増加はもちろんのこと、思い切った効率化を推し進めなければなりません。セオリー通りの受験勉強では合格率はかなり低くなると思われます。

故に自信がない

合格するためには、しっかり自信を持つことも大切です。「自分には無理だ」と考えている生徒の場合、そこの合格に対して求められる勉強量を受け入れることはできません。どこかで集中が切れてしまい、勉強に身が入らなくなって終わりです。


Aさんのように、今までの遅れをカバーするためにたくさんの勉強量が必要であるなら、「ぜひとも合格したいけれども、自分には無理ではないか」と考えてしまうメンタリティでは達成が難しいです。したがってまずは、「合格できるとすれば、こういう方法である」と具体的戦略を伝えて、Aさん自身で「これなら合格できるかもしれない」と考えさせることが必要です。


もちろんそれに加え、専門学科受験はリスクのないボーナス受験であることを強調することも不可欠です。

京都府高校入試の難関【専門学科】は恐れることなく受験せよ
受験したら意外と合格する

高校受験全体に言えることですが、「難しい、難しい」と噂される高校は、実際に受験したら意外と合格します。熱心に受験勉強を行う限り。

Aさん本人の性格としては非常に真面目であるため、自信満々とはいかずとも、自分の全力を出してくれることは明らかであったため、塾側としてもそこまで大きな不安はありませんでした。

A さんアカデミア科合格への戦略

macbook pro on brown wooden table

前述のように、Aさんは基礎学力についてアドバンテージがありませんし、専門学科受験に求められる応用対応力は発展途上でした。したがって、開き直った戦いを選択することで合格率を高める必要があります。

少なくとも前期選抜まで、理科と社会は最小限の努力にとどめる

紫野アカデミア科の配点を確認しましょう。比較として、桃山自然科学と山城文理総合も載せます。

国語数学英語理科社会報告書面or小合計
桃山 自然科学100100100100100面接25525
山城 文理総合1001001005050100面接25525
紫野 アカデミア120120120100面接40500
https://takakurajuku.jp/senmon-system

ご覧の通り、学力検査において理科と社会がないことは大きな特徴です。Aさんはアカデミア科志望でしたが、特に理科の物理や化学などは苦戦しているタイプだったので、この特徴は追い風です。


もし入試までに1年以上の、十分に時間があるのであれば、理科についても一生懸命に受験対策してもらうことになったでしょう。入試科目にないとはいえ、理系科目に苦手であることは将来大きなハンディキャップとなるからです。

ただ、第一目的は合格であり、なおかつ

  • 基礎学力がおぼつかない中、さらに時間が限られている
  • 特に数学の応用問題に時間をかけなければならない

といった制限がある場合は、思い切って捨てなければそもそもの合格ができません。ここは断捨離の勇気が求められますし、Aさん自身も「理科を削ることで心の余裕が保たれる」という意見だったのでスムーズに納得して進めることができました。


理科と社会についてAさんが行ったことは、「併願先の私立(花園高校)の過去問を5年分解いておく」程度です。これだけでも少なくない分量ですが、私立受験が終わったら理科と社会には一切触れていないわけですし、受験生にとっては最小限の努力と言えます。

Aさんの受験対策において、理科や社会を捨てても問題なかった理由

「理科と社会を捨ててしまうことは、不合格になった場合にとてもリスキーではないのか」と感じるかもしれません。

close up of microscope

もちろん、Aさんの場合も、もしアカデミアに不合格になった場合は紫野の普通科を受験することとなります。普通科では理科も社会も同じ割合で評価されるため、そこで低得点に終わると普通科すら不合格の危機に陥ることは確かです。


ただ、Aさんの場合は下記のような事情がありました。

  • 私立受験校である花園高校も魅力的であるため、そちらに合格しても本人も家庭の方針としても問題なかった(特に公立にこだわりがなかった
  • 評定と英語力を考えると、前期選抜終了後に理科や社会を頑張っても合格水準には間に合いそうであった

こういった事情があったからこそ、思い切った効率化戦略を取ることができました。もし、「どうしても公立高校に入りたい」などの事情があれば、少し違った方針で受験を進める必要があります。

英語の長文読解トレーニングは、絶対に毎日欠かさない

yellow tassel

アカデミア科の英語は、リスニングに多少力が入っているものの、他の専門学科に比べて特別に難しいわけではありません。ただ、安定した得点源になることは変わりないですし、また本人も最も意欲的に取り組める科目であるため、多くの時間を投資するに値します。


したがって、Aさんも他の専門学科受験生と同じく、英語長文は毎日欠かさずに行ってもらうことになりました。読む長文は、下記のステップがお勧めです。

  1. 公立高校の普通科過去問の英語長文(普通科の赤本)
  2. 私立受験校の過去問
  3. アカデミア科の過去問
  4. 文理総合や自然科学科など他校の専門学科過去問
  5. 灘や開成含む他府県の難関高校の過去問

たくさんに見えますが、数ヶ月毎日続ければかなり深くまで理解することができます。Aさんの場合は秋以降の入塾であったこともあり、3までは最低限こなすことができました。


準備期間に余裕があったり、または堀川や嵯峨野が志望校であれば 5 までを目標にします。

面接は練習すれば大丈夫

アカデミア科の場合、面接は英語で実施されます。配点も40点あり、合計500点のうちの8%を占めます。

国語数学英語理科社会報告書面or小合計
紫野 アカデミア120120120100面接40500
https://takakurajuku.jp/senmon-system

「英語面接」と聞くと身構えてしまう生徒がほとんどですが、内容は英検とそんなに変わりもなく、本番の流れ通りにイメージして練習すれば自信満々に受けることができます。


Aさんは不安を持ちながらも英検を経験していましたし、受験までに複数回練習を重ねるだけで十二分に合格水準のレベルに達することができました。実際にアカデミア科を受験した生徒は「楽しく面接を受けることができた」と答えてくれることがほとんどなので、この点は特に大きく心配しすぎる必要もないでしょう。

令和6年度入試から、英語面接は日本語面接に変更

アカデミア科は長らく面接を英語で行ってきましたが、令和6年(2024年)から日本語で行うことになりました。

【完全版】紫野高校アカデミア科の面接対策とアドバイス


「英語だと自信がないから、日本語で良かった」と思うかもしれませんが、そもそも英語面接は十分に対応可能なものでしたし、むしろ英語である分、浅い内容で済んだので簡単だったと思います。


それが日本語になり、多少深い思考も見ることができるようになった点において、普段から社会問題を多角的に捉えて表現する習慣が求められるようになっています。

狙う総合点

点数が公表されない面接点を除けば、アカデミア科は「報告書が100点」「学力検査が360点」となり、合わせて460点満点です。


Aさんの報告書点は圧縮後78です。

学力検査報告書合計
? /36078/100? /460

アカデミア科合格のための点数を考えなければなりませんが、Aさんは当日の学力検査にそこまで大きな自信があるわけではありません。「英語と国語はまずまず取れると思うが、数学でたくさん落としそうで不安がある」と伝えてくれたため、無理のない目標設定が必要です。


そしてアカデミア科でいえば、年度にもよるものの、面接を除いた合計点で300点くらい欲しいので、学力検査にて230点くらいがほどよい目標点になりそうです。

学力検査報告書合計
230 /36078/100308 /460

学力検査は360点なので、230点ですとだいたい6.5割。6.5割はAさんにとって簡単なハードルではありませんが、合計点で280~290点でも合格の見込みはありますし、余裕を持って少し高めの目標を持つこともよいでしょう。

学力検査の内訳

230点を目標とすれば、Aさんにとっては下記のような配点が現実的です。

数学英語国語合計
70/120 (5.8割)80/120 (6.7割)80/120 (6.7割)230/360 (6.5割)

英語は毎日の長文読解の成果を見せたいので8割くらい取れれば文句なしの勝利ですが、少し工夫のあるリスニング部分は対策しても不安定な部分もあるため、現実的な点数に抑えて考えたほうが無難です。


数学は苦手意識の最も強い教科でしたが、アカデミアの数学は特別難しい問題が揃っているわけではありません。

  • 基礎問題を落とさないこと
  • 各大問の(1), (2)など基礎を取れるように意識する

ことを念頭に置いて過去問を解けば、ある程度の得点は取れるようになってくるので、Aさんも6割弱なら希望があるだろうと前向きに考えることができました。


国語も決してイージーな科目とはいえませんが、本人が過去問を解いた上で最も手応えを掴んでいた科目でもありました。過去問の実績通り、7割を安定して取ることが目標です。

実際の点数

Aさんは見事、紫野高校アカデミア科に合格してくれました。実際に取得した学力検査得点です。

数学英語国語合計
68/12060/12082/120210/360
Aさんの「学力検査」結果

合計では6割に満たない程度で、目標には届いていません。

数学英語国語合計
目標70/120 (5.8割)80/120 (6.7割)80/120 (6.7割)230/360 (6.5割)
結果68/120 (5.7割)60/120 (5割)82/120 (6.8割)210/360 (5.8割)
Aさんの「学力検査」結果

英語が5割と多少すべってしまった印象があります。日頃よりトレーニングしていても、多少は得意であっても、リスニングと筆記の総合点で失敗することはありえます。「もし毎日の長文読解がなかったら」と考えると怖い結果ですが、それに加えて塾としてもリスニングに改めて力を入れるようになったキッカケです。


報告書の点数と合わせて、(面接点を除いた)460点満点中288点での合格でした。

学力検査報告書合計
210/36078/100288/460
Aさんのアカデミア科 総合結果

少しギリギリ感のある合格で、面接結果も左右したのかどうかは分かりませんが、短い期間でよく合格まで持っていってくれました。遅れを取り戻すためにたくさんの授業を追加受講してもらう必要もありましたが、黙々と取り組める人間性は間違いなく合格につながっています。

私立は花園高校 特進Bコースに合格

Aさんの私立併願先は、人気の高い花園高校でした。特進Aコースを志望していましたが、結局は特進Bでの合格となっています。私立高校受験のあと、すぐにアカデミア科受験が待ち受けていますが、そのときは出鼻をくじかれてショックも合ったと思います。


「併願先の志望コースに不合格で、肝心の第一志望に合格できるだろうか」


と考えることも無理もありません。


ただ、花園高校の特進Aは簡単でもないですし、Aさんの準備期間を考慮すると不合格の可能性も高いことは分かっていましたし、事前に覚悟しておくように声掛けし、想定させていたことはメンタル的に大きなフォローができたと思います。Aさんんもよく切り替えて受験してくれました。

併願私立に落ちることは珍しくない

「併願私立の上位コースには落ちたけど、第一志望の専門学科には合格した生徒」は珍しくありませんし、毎年います。例えば紫野アカデミアで言えば、Aさんの他に2023年度入学生でも花園Bから合格している生徒がいます。


大谷高校のマスタークラスに不合格であっても嵯峨野こすもすに合格した生徒など、出鼻をくじかれても吹っ切れた気持ちで受験して合格を掴み取った生徒をたくさん見てきました。


精神的に不安になると本来の力が全く出せません。だからこそ、併願先での合否は気にせず、ひたすらに第一志望のことを考えることは本当に大切なことです。

Aさんの総括

アカデミア科受験に関して、Aさんのケースから学べることをまとめます。

  • 英語長文を毎日丁寧にやっていても、5割程度に収まってしまう可能性も考慮し、数国の得点を伸ばすことを怠らない
  • 面接を除いた460点満点で280点程度でも合格可能性はある。評定がAさんよりも高いのであれば、積極的に受験を検討するべき
  • 併願先の私立で志望コースに合格しなくても、問題なく気持ちを切り替えて良い
  • 英語面接は恐れずに楽しめば大丈夫

合格点を考えると、例えばオール5に近い成績を取れている場合は、受験対策さえやっておけば高い合格率を見込めます。アカデミア科は専門学科の中でも配点が特徴的ですし、その分ピタリと趣向に合う生徒も多いはずです。


前向きな気持ちで上を目指していきましょう。

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