【ケーススタディ】桃山自然科学科:普通科の志望から変更してチャレンジ、成功した事例

ケーススタディとは、個別具体的な事例(ケース)を研究(スタディ)することで、そこから得られるヒントや法則を見つけるための学習です。


高倉塾では長年、京都府の高校受験をサポートしています。その中でも典型的なケースをピックアップし、そこで得られた知見をケーススタディとして紹介します。受験生は参考にしてください。

事前に読んでおくべきもの

桃山高校 自然科学科の合格点の計算方法を把握しておいてください。

【専門学科】公立高校の難関コース入試制度を解説。堀川探究、嵯峨野こすもす等

Iさんのプロフィール

今回はIさんのケースを紹介します。

中2春に高倉塾に入塾

Iさんが入塾したのは中学2年生のスタートからです。集団指導塾に1年間通っていたものの、成績が特に伸びないという理由から個別指導塾を探していたようです。個別指導にて、自分に対して時間を使って解説してくれる環境を求めていると保護者の方と話してくれました。

数学が好きで、桃山高校に行きたい

Iさんは、数学が大得意というわけではないものの、比較的数学が好きで、勉強するのならば数学や理科に重点を置きたいと考えていました。バレーボール部に所属しており、決して楽な環境ではありませんでしたが、勉強も手を抜かずに頑張りたい気持ちを持っていました。


そういったこともあり、スーパーサイエンスハイスクールで理系教育を重点的にアピールしている桃山高校に魅力を感じていることを入塾当初より伝えてくれていました。

評定は、自然科学科には頼りないレベル

Iさんは勉強に真面目に取り組める素晴らしい人間性を持っていましたし、バレーボール部とよく両立して学校の成績を取っていました。

評定数学英語理科社会国語音楽美術保体技家合計
1年学年末43434335332
2年学年末44434435334
3年12月末55444435337
3年間
合計
103
圧縮後76
「圧縮後」の意味は『専門学科入試制度』を参照。

中2からしっかり勉強を初めて成績を伸ばすことはできたため、桃山高校の普通科を受験するのであれば、悪くない成績です。表には掲載していませんが、中期選抜で副教科を2倍すると147となるため、桃山普通科の合格は狙えるレベル。


ただ、3年間合計を圧縮するとその数値は76。その他専門学科である自然科学科を目指すには少し心もとない数字です。合格できないわけではないが、これくらいだと不合格の確率は高いでしょう。


こういった現状もあり、当初から受験シーズン前まで、あくまでも普通科を第一志望に考えてくれていました。

Iさんの課題(合格のために克服すべき点)

Iさんの課題は紛れもなく英語でした。桃山高校を志望したのも理系科目への関心がきっかけでしたが、

  • 英語
  • 国語
  • 社会

の3科目に対しては苦手意識が先行して苦しむ展開でした。


ただ、Iさんは成績が特に高いわけではないですし、報告書で稼ぐことはできません。普通科の受験であれば悪くはありませんが、仮に自然科学科を受けるなら場合、学力検査で特に英語を苦手のままに放っておくと合格はかなり難しくなってきます。

schoolchild solving elementary science test【専門学科】に合格したければ、今日から毎日英語を勉強せよ

桃山の普通科ではなく自然科学を受験する場合では、社会の学力検査はありませんから、その点は安心できます。ただ、その分に英語の苦手をいかに克服して点数を取るか、がIさんの受験対策のメインテーマでした。

結局は数学と英語が大切

そんなに多いわけではありませんが、Iさんのように数学は得意だが、英語は苦手である生徒はいます。そういった生徒は数学には関心があっても、英語には数学のような関心が湧かないようです。

person writing on white board

受験においても人生においても、もっとも重要な教科が数学であることは間違いありません。したがって、中学生のうちから数学や理科、そして桃山高校に関心を持つことは素晴らしい傾向であると思います。


ただ、将来に学問やビジネスにおいて、鍛えたその数学的思考でたどり着いた発見を表現する言語は、日本語ではなく英語です。今の世の中、何かの専門的で有益な最先端の情報や知見は、日本語ではなく英語で書かれているのが事実です。


Iさんと同じく、数学が好きな生徒たちは、英語の重要性を理解すれば必ず英語勉強に身が入るようになります。

普通科を選ぶか、自然科学を選ぶか

Iさんの場合、中3の夏に至るまで、

  • 普通科
  • 自然科学科

2つのいずれを受験するのか、第一志望とするのかは決断できていませんでした。報告書(評定)の数値が低く、合格に対して大きな自信が持てなかったからです。むしろ、ずっと普通科を念頭に置いて学習を続けています。


ただ受験シーズンが近づくにつれて、徐々に気持ちが自然科学科を目指す方に傾いていきました。


日頃の勉強で自信がついてきたこと、そして京都府の受験においては専門学科受験におけるリスクが非常に限定的であったことが大きな要因です。何よりチャレンジを避けることは人生においてよくないので、自然科学科を第一志望と見据えて頑張ってみよう、ということになりました。

Iさんの自然科学科合格への戦略

calculator and tax forms inside the clear envelope

Iさんが自然科学科に合格するために必要なことは、とても簡単に考えることができます。

  • 数学と理科の応用問題に、継続的にチャレンジ
  • 英語を伸ばせる限り伸ばす

数学と理科に関しては、個別指導により順当に力を伸ばすことができます。したがって、英語がもっとも大きな懸念事項でありキーポイントとなることは明らかでした。

狙う総合点

桃山高校自然科学科の配点は表の通りです。全ての専門学科を確認したい場合はこちらをご参照ください。

国語数学英語理科社会報告書面or小合計
桃山 自然科学100100100100100面接25525

シンプルな構成です。国語、数学、英語、理科の4教科は完全にフェアに評価され、報告書の割合も同じです。社会を思い切って削っているのも、特色を考えると魅力的です。



他の専門学科と同じく、合格水準を考えるためには、面接を除いた合計500点で考えることにします。Iさんの報告書は前述の通り76点です。

学力検査報告書合計
? /40076/100? /500

自然科学科の合格においては、最低でも500点のうち6.5割ほどの325点は欲しいところです。Iさんは素質はあるものの、まだまだ高得点を安定して狙う自信もありませんでした。そのため、学力検査の目標点はギリギリの250点と設定します。

学力検査報告書合計
250/40076/100326/500

学力検査の内訳

だいたいの目標点を250点としたところで、Iさんの目標点は下記の通りになりました。

数学英語国語理科合計
65/10060/10060/10065/100250/400
数学と理科を伸ばしつつ、英国を同水準まで粘る想定

コンセプトとしては、数学と理科で7割を取れる学力を目指しつつも、英語と国語を同水準まで持っていこうというものです。英語が順当に伸びれば、他科目で多少失敗しても取り戻せるでしょう。


Iさんは過去問を少し覗いてみても、むしろ自信を持てなくなっていたものの、これくらいの点数であればプレッシャーなく受験対策ができると考えることができたようです。英語が苦手であっても、5~6割であれば「頑張ればなんとかなるんじゃないか」と思える水準です。


英語の目標を5割としてもよかったですが、数学と理科も必ずしも思うような点数が取れるわけではありません。苦手であっても確実性のある英語を少し高めに設定すると、受験対策の時間配分は成功しやすくなります。

まずは普通科対策から

Iさんはそもそも大きな自信があったわけではなく、普通科を念頭に置いていた時期が長くありました。したがって本人も保護者の方も、「まずは普通科にしっかり合格できるように」という願いがあります。


評定に余裕がある場合は、普通科対策をほどほどにして専門学科対策に時間を投資しても何の問題もありません。しかしIさんのように評定に余裕がない場合は、普通科対策を十分に行った後に専門対策を行うことになります。

まずは左側、普通科の過去問5年分を何周もすることから。
前期の普通科過去問はやらない

普通科の対策はそんなに難しくありません。ただ過去問5年分を解説を受けた上で3周行えば十分です。1〜2周で十分である生徒も多いくらいです。


ただし、Iさんのように専門学科を第一志望とする場合は、前期の普通科過去問はあまり手をつけない方が良いでしょう。前期は専門学科を受けるわけですし、普通科対策は中期だけで行います。


普通科の前期も中期も両方できれば良いかも知れませんが、受験生はそんなに時間がないのが通常です。

実際の点数

2月、いよいよ学力検査がありました。Iさんの目標は、400点満点中6割ちょっとの250点です。


実際の点数は、下記の表の通りになりました。目標と並べて記します。

桃山自然科学科数学英語国語理科合計
目標65/10060/10060/10065/100250/400
結果65/10055/10058/10065/100243/400

珍しいケースですが、目標とほぼ同じ点数を取得しています。

学力検査報告書合計
243/40076/100319/500

Iさんは見事合格しましたが、この受験年度においても余裕のある合格とは言えなかったかもしれません。面接の点数も合格を左右した可能性があります。ただ、普通科を志望していた時期より勇気を持ってよく受験対策に没頭してくれました。

I さんの総括

Iさんの勝因は下記に集約されます。

  • 普通科の対策から入念に行い、安心した上で自然科学科の対策を始められたこと
  • 苦手の英語の点数を高めるために時間を使えたこと

Iさんのように、「まずは普通科の合格を確実にしておきたい」と考える生徒はとても多いです。保護者の方も、不安が先行する部分があるので同じように考えておられます。


もし評定に余裕があるのであれば、普通科の勉強はほどほどにして、専門学科対策に時間を投資して合格率を高めることができるでしょう。しかしIさんのように評定(報告書点)に大きなリードがあるわけでない場合でも、十分に普通科対策を行ってからでも間に合います

close up of hands

また、やはり苦手科目の攻略が大切であることもわかります。Iさんは苦手の英語が55点でしたが、まだまだ甘い間違いも散見されました。もし英語に集中していなければ、おそらく点数は30~40点であったでしょうし、そうなればほぼ確実に不合格です。


桃山高校の自然科学科は、数学と理科はたくさん応用問題を解いて準備しなければなりません。桃山の過去問だけでなく、

  • 立命館
  • 同志社
  • 山城文理総合

あたりの過去問をピックアップして解いておくことが望ましいですし、余裕があれば堀川探究や嵯峨野こすもすの数学/理科に慣れておくと良いでしょう。


こういった理系科目の対策に加え、英語も伸ばすことは簡単ではありません。受験対策は早期に計画し、捨てるところは思い切って捨てて当日を迎えましょう。

2 COMMENTS

山田太郎

今年度、桃山高校の自然科学科を受験いたします。
そこで質問なのですが、過去問を解いても、年度によって、結果が安定いたしません。特に英語です。
ここからラスト1ヶ月すべきこと、アドバイスなどをよろしくお願い致します

返信する
takakurajuku

英語の得点が安定しないのは、ズバリ長文が雰囲気でしか読めていないからです。一文一文の意味が100%理解できていたとすると、100%で正答することができます。雰囲気で正答できる問題もありますが、安定して合格水準を獲得するには「読解スピードを落とさない範囲で、一文一文の理解度を高めるトレーニング」が必要です。

堀川や嵯峨野に挑戦する塾生であっても、彼らの「結構読めた」は信頼できず、大事な文章の意味を把握していないことが非常に多いです。

例えば全ての文章に対し、受動態や現在完了など、習った文法を完全に反映させて翻訳するような、つまり精読トレーニングを行います。もし個別指導塾に通っているのならば、すでに桃山の過去問で個別に授業を受けているかもしれません。それに加えて、そこで理解できた年度の過去問長文を、「一文一文の細かな意味が分かっている状態で」何度も何度も読みます。理解度が高くなった同じ文章を何度も何度も読むことでしか、長文読解レベルを高めることはできません。塾に入っていない場合は、できれば桃山の過去問を踏まえて解説してくれて、なおかつ不十分な文法事項があれば基本テキストに立ち返ってくれるような家庭教師を雇えれば1番良いと思いますが、それが難しい場合は学校の先生に頼るなどの手段があります。

①まず講師と一緒に過去問の長文を一文一文、文法事項を逃さず正確に翻訳してもらう
②その状態で、繰り返し読み込む

これを3ヶ月ほど繰り返せば受験者でトップクラスの読解力が身につきます。1ヶ月でも得点を十分に伸ばせます。本番の試験ではいちいち全てを精読していては時間が足りませんが、試験まではこれをやってスピードと精度を高める練習が必要になるのです。

桃山自然科学は嵯峨野や堀川に比べるとそんなに難しい長文はありません。基本だけを抑えるだけで読める文章ですし、ラスト1ヶ月で大きく変わります。頑張ってください。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください