【ケーススタディ】堀川探究学科: 学校の成績を活かして、徐々に合格に自信をつけた事例

ケーススタディとは、個別具体的な事例(ケース)を研究(スタディ)することで、そこから得られるヒントや法則を見つけるための学習です。


高倉塾では長年、京都府の高校受験をサポートしています。その中でも典型的なケースをピックアップし、そこで得られた知見をケーススタディとして紹介します。受験生は参考にしてください。

事前に読んでおくべきもの

堀川高校 探究学科群の合格点の計算方法を把握しておいてください。

【専門学科】公立高校の難関コース入試制度を解説。堀川探究、嵯峨野こすもす等

Nさんのプロフィール

今回はNさんのケースを紹介します。

中1春より高倉塾に入塾

小学校は塾に入ったことがなく、自分で勉強していました。あまりよく知らないものの、「堀川高校」という名前は兄弟や先輩からよく聞いており、漠然とそこに入りたいというイメージを持っていたようです。


保護者の方としても、それくらいのレベルを目指せる状況になれば理想、とのことで、個別指導で確実な歩みを望むことを希望されました。

小学校では勉強ができたが、中学校では未知数

小学校では、算数などを始めとして、特に勉強に苦労することはなかったNさん。しかし、小学校の成績がどうあれ、中学校の5段階評定でどれくらいの成績を取れるのか、ここは蓋を開けてみなければ分かりません。


例えば、同じくらいの学力の生徒であっても、副教科をよく取れる生徒とそうでない生徒では、公立入試の『報告書』スコアは大きく変わるからです。


素質はあるが、中学校でどう転ぶかはまだ分からないところです。

中学3年間の成績

Nさんは、中学校3年間においてじっくりと評定を高めるための勉強をすることができました。特に1, 2年生の段階では基礎テキストのみを集中して取り組み、定期テストだけを考えて過ごすことができました。


3年12月末までの評定をまとめた表です。

Nさん評定数学英語理科社会国語音楽美術保体技家合計
1年学年末45445553540
2年学年末55455453541
3年12月末55545553542
3年間
合計
123
圧縮後91
「圧縮後」の意味は『専門学科入試制度』を参照。

圧縮後の評定が91あれば、十分に探究学科合格が狙えます。


最重要の5教科で全てが5を取れるほどではありませんが、教科書レベルの内容はもれなく頭に入れることができました。真面目な人間性があるため、副教科でよい成績が取れたことはとても大きなアドバンテージとなっています。

副教科の成績

堀川高校の探究学科群をはじめとする専門学科では、副教科の成績を2倍にカウントする処置はありません。


ただ、Nさんもそうでしたが、「探究学科に合格する自信はそこまでないし、まずは普通科の合格を確実にしたい」と考える受験生はとても多いです。そんな場合は特に、副教科の評定はとても大きな保険として機能します。


「探究がだめなら普通科がある」という気持ちがあると、受験勉強にも安心して取り組めます。副教科の評定は意識して取りましょう。

Nさんの、受験にあたっての課題

jigsaw puzzle

受験にあたってNさんは、探究学科に行きたいという気持ちを持っていたものの、あまり強い自信を持つことができていませんでした。


特に、本人はもちろん保護者の方でも、「探究科やこすもす科の受験においては、小学校から受験トレーニングを積んできたエリート層でしか合格できないのではないか」といったイメージを抱かれていることが珍しくありません。そのイメージが強いと、どうしてもチャレンジする気持ちが弱くなる場合があります。


こういった理由から、他に合格した生徒よりも、少し難しい課題に直面しました。

過去問の苦手意識が強くなる

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Nさんも他の生徒と同様に、中学2年生あたりまで、まず基礎テキストにおける完成度を高めることに集中してきました。応用テキストを利用した難問チャレンジはその合間に行う、というスケジュールで学習を進めてきました。


ただ、中3夏休みあたり、受験対策が本格化するあたりから模試成績も伸び悩みだし、練習のための過去問にぶつかってもなかなか正答率が上がらない、という時期が長くありました。「なかなか受験の実感がくなく、モチベーションも上がらない」と言っており、自分の精神的コンディションを理解しているようでした。


Nさんが夏休み以降に積極的に解いていたのは、これらの高校の過去問です。

  • 山城高校 文理総合科
  • 紫野高校 アカデミア科
  • 京都府公立 前期選抜

このあたりのレベルの過去問は、堀川探究科合格のためのステップとして最適です。問題をしっかり読み、今まで培ったことを発揮すれば解ける、よい問題がたくさんあります。この過去問をたくさんやり尽くした後に探究科の過去問を見ると、余裕を持って解答できる力がついてきます。


Nさんの場合は、焦りも手伝ってしまい、これらの過去問も苦戦する時期が続きました。その結果、探究科に憧れを持ち、合格したい気持ちは強かったものの、「やはり普通科の受験にしよう」という考えに傾いてきました。

普通科の過去問に集中する

よれよれになった赤本

本来の合格プログラムでは、例えば堀川高校の探究科を目指す場合、上記に挙げたような、練習となる難関高校の過去問をガンガン解いて経験値を積ませます。


ただ、Nさんのように、受験プレッシャーにより難関校の過去問に対して大きな時間が取れないケースは珍しくありません。


幸い、少し受験勉強に停滞が見えたのはまだ中3の9〜10月頃であったため、十分に修正可能でありました。これが12月や1月になると、多少は合格率も下がっていたことは間違いありません。


本人との相談の結果として、

探究科レベルの過去問は一旦忘れて、公立普通科の過去問だけたくさん頑張る

という方針を決定し、12月いっぱいはそれで取り組むことにしました。普通科の過去問であっても、特に前期選抜の数学などはとても難しい良問がたくさんあるのです。


専門学科受験の本番は2月中旬なので、1ヶ月で思い切り探究科過去問にぶつかろう、と開き直って頑張ることにしました。

肩の力を抜いたほうが合格できます。

難しいとされる高校だからといって、「想像以上の努力が必要だ」とか「受験以外の全ては諦めて、集中しなければならない」といった具合に、あまり精神的に追い詰める必要はありません。


むしろ逆効果になることもあるので、リラックスすることも大切です。

chairs near body of water

Nさんの場合は、真面目な分、志望校に対するプレッシャーが強くなってしまい、受験勉強に力が入らない時期がありました。


ただ、ある程度の学校評定を取れているのであれば、一旦肩の力を抜いて、「ほかは忘れて、とにかく公立普通科の問題だけを頑張っておく」などの応急処置をするだけでも十分です。


基本的な入試過去問を確実にクリアする実感を思い出すことで、残り1ヶ月ほどで志望校の過去問に集中すれば何とか受験が形になることがあります。

探究学科群、合格への戦略

person using a green and black calculator

Nさんの基礎情報を考慮し、12月以降の高倉塾では、2月の学力検査に向けて以下のような目論見がありました。

  • 得意の英語国語の対策は、少し比重を減らす
  • 数学と理科に大きく時間を注ぎ、得点を安定させる

この目論見のもと、具体的な合格プランを考えてみます。

狙う総合点

目標を考えるときは「面接」を除いて「学力検査」「報告書」の合計500点満点で考えます。

学力検査報告書合計
400100500
面接は配点割合が小さく差が出にくいため、多くの受験生が合格者平均が取れたと仮定する

Nさんの報告書点は、12月末の時点で91点で確定しています。この点数は1年生からの成績が関わるため、3年生の1学期にはある程度は見積もれています。

学力検査報告書合計
? /40091/100? /500
成績をキープし、最低でも75を目標に

次に、合計点と「学力検査」の目標を考えます。


Nさんはもともと英語が苦手ではありませんでしたし、塾でもよく英語の難しい長文にもチャレンジしてくれていました。したがって、英語に関してはほぼ確実に合格点を見込めました。


心配な点があるとすると、数学と理科です。苦手というわけではありませんが、探究科の理系科目はなかなか骨がある問題が多いため、講師の強力なサポートがなければ難しいことがあります。この理系科目を、いかに励ましながら得点力を高めるかがカギとなります。


Nさんは「学力検査」で91点あり、基本的には申し分ありません。Nさんは基礎学力に疑いはありませんが、そこまで難問への対応力があったわけではありません。よって6割の240点以上を目標にして過去問対策を行います。

学力検査報告書合計
240/40091/100331/500

240~250点は、堀川探究に限らず嵯峨野こすもすなどの受験生にとっても、ほどよい目標点になります。小論文を除いた点数としては、例年通りであれば十分合格に達するはずです。

学力検査の内訳

「学力検査」の目標を400点満点中の240点と決定したところで、あとは具体的な配点を考えます。Nさんのための具体的合格プランは以下のような配点になりました。

数学英語国語理科社会合計
50/10080/10055/10020/5035/50240/400
苦手の理系科目を文系科目でカバーする構成

塾では、特に英語には普段から力を入れており、Nさんにおいても強みとなる教科です。本人は探究科合格に自信がなかったようですが、英語で80点を取ることには強気でいることができました。

高得点でなく、合格点を狙う

さて、上記の学力検査の内訳は、人によっては思ったよりイージーに見えたのではないでしょうか。


数学は5割でよいし、理科は4割の20点でよしとしています。

man in black formal suit jacket

Nさんは学校評定はしっかり取れてるので、当日の学力検査で一発逆転を狙う必要はありません。ただ、過去問を眺めたときに、「難しい問題ばかりで、解ける問題が少ない!」と考えてしまうと、その時点でひるんでしまって受験自体を諦めたり、勉強に身が入らないリスクがあります。


しかし、合格のために必要なものは、あくまでも「高得点」ではなく「合格点」です


高得点を狙えるのであれば素晴らしいですが、難関高校を受験する場合は、現実的な目標を設定し、精神的に強気になれる状態を作っておくようにしましょう。

実際の点数

実際にNさんは2月の学力検査において、このような点数を獲得しました。

数学英語国語理科社会合計
60/10072/10072/10027/5037/50268/400
Nさんの「学力検査」結果

目標を大きく上回ることができました。主に公立普通科の過去問にたくさん時間をかけた受験戦略でしたが、残り1ヶ月ちょっとの探究科過去問の演習がしっかり実を結んでいます。

数学英語国語理科社会合計
目標50/10080/10055/10020/5035/50240/400
結果60/10072/10072/10027/5037/50268/400

年度により難易度も異なるので、一概に「目標点を達した」「できなかった」と判断することはできません。ただ、例年の難易度を考えた場合に求められる点数を考えて逆算計画することは必要ですし、今回は少なくともそれはクリアできたことになります。



面接を除いた総合点では359点。かなり余裕をもって合格できた事例でした。

学力検査報告書合計
268/40091/100359/500

Nさんの総括

Nさんから学べる最も大きな教訓は、

  1. 報告書(学校評定)点で90点を超えていれば、探究学科群の合格率は高い。
  2. 自信がなければ、普通科の問題に熱心に取り組めばよい。探究過去問は後回しでも合格できる。

この2点でしょう。過去問を見て、なかなか合格できるイメージが湧かずに苦労したと思いますが、その分は公立普通科の問題に集中して演習できたことは大きいです。特に、前期選抜の3教科は質の高い問題も多いです。


本番の「学力検査」ははっきり言って想像以上の成果が出たケースでしたが、実際はもう少し低い点数でも合格できたはずです。普通科の過去問をたくさん頑張っていたことで、「仮に探究に落ちても、中期で普通科には合格できる」という気持ちがあったことは大きなプラスであったでしょう


堀川高校の探究学科群への入学を希望する方は、このNさんの数字や戦略を参考にしてください。

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