個別指導塾ですから、100人生徒がいれば「100通りの勉強の進み具合」があります。
- つまづいている、苦戦している単元
- 得意であり、受験でも得点源にすべき単元
など、学力向上や志望校合格のために塾組織として把握しなければならない情報がたくさん存在します。それらを一人ひとり、細かくトラッキング(追跡)していくことは簡単ではありません。
もちろん、担当講師はずっとその生徒の勉強を見ているわけですから、細かな点はほとんど把握しています。しかし、「受験のためにコレをすべき、あれは飛ばすべき、ここはもっと時間をかけて強化すべき」といった点を講師が全てアドバイスできるわけではありません。
なぜなら、そういった経験値やデータを持っているのは、講師個人ではなく、塾としての組織自体であるからです。つまり、担当講師は「分かりやすく教えるプロ」に徹し、具体的な生徒ごとの戦略は教室全体として司令していかなければなりません。そういった各生徒のための微調整を年間通して行って始めて、難関校に合格するレベルに到達します。
「個別指導塾だから、勉強を分かりやすく教えてくれた」といった満足度だけであるならば、担当講師だけが生徒の勉強を把握するだけで問題ありません。
しかしそこから一歩進んで、「難関校にも合格できるレベルまで引っぱり上げること」を考えるのであれば、講師と教室責任者のコミュニケーションをスムーズかつ綿密に行い、教室責任者が常に生徒一人ひとりの状況を把握できるようなチェック体制が求められます。この組織としての知恵を活用できるところが、家庭教師と個別指導塾の大きな差ではあります。
個別指導塾では「生徒に勉強を手厚く教える」ことに重きを置くべきではあるものの、難関高校への合格を目指す高倉塾では、この点に手が回らない状況は避けたいと強く考えています。
個別指導塾としての学習管理をパーフェクトに近づけるため、上の画像のような一覧表を使い、生徒の進捗をこまめに記録しています(サンプル)。
- 単元名
- 学校進度
- 指導日
- 講師名
- 進捗率と完成率
上記のような「担当講師と教室長で把握すべき重要事項」がひと目で分かるように記録を残します。進捗率や完成率が高い単元や低い単元は、色の濃淡で直感的に分かります。
「学校進度よりもどんどん先取りができているか?」「理解に苦しんでいる苦手単元はないか?」「ある単元の理解度は、本当にテストで点が取れるまで高まっているだろうか?」
など、講師や教室にとって必要な情報を知り、それを授業に反映させるために役立ちます。
担当講師は、毎回授業の後にチャットツールを使って教室全体へ記録事項を共有します。教室責任者がカギを開けて最初に取り掛かる仕事は、教室のパソコンで前日の全生徒の記録をチェックすることです。一日も欠かすことはありません。こちらを絶対的な仕事としてルール化することで、生徒の様子をリアルタイムで把握できるようになりました。
ずっとその生徒を見ている担当講師といえど、定期テストや入試の日程や範囲を全て把握し、授業をコントロールすることは簡単なことではありません。目の前の指導に集中しすぎて、俯瞰的な視点で学習プランを建てることを忘れてしまうことがよくあります。
記録している一覧表では、テスト範囲や日程も正確に書き込み、「やらなければいけないこと、期日までに済ませるべき単元」を意識しやすいように工夫しています。
担当講師は、授業後にその日の生徒の様子をコメントに残しています。
中3は冬期講習会などで過去問演習に入りますが、その報告書も作成します。
コメントもチェックし、気になる点は担当講師とチャットを通して解決します。教室責任者はこういったチェックをもとに、次回授業の内容や改善点を指示することになります。
この授業記録は『成績報告書』と合わせて毎月ご家庭に郵送しています。塾としての説明責任を果たす意味合いと、また講師にも「自分の仕事を本人や保護者の方に、分かりやすく報告すること」に関するプロ意識を持ってもらいたいからです。
この記録には生徒の学力向上と志望校合格に欠かせないものであるため、質の高い記録と報告が求められます。もともと高倉塾の授業は90分でしたが、記録を充実させて指導に活かすため、授業時間を80分に短縮して10分間を記録時間に当てた経緯があります。
個別指導塾として、生徒それぞれの状況がよりクリアに把握できるようになったため、授業時間の短縮はやってよかった改革の一つです。