インターネットを見ていると、こんな記事が目につきました。
この記事では、例えば「アンケートした東大生の3人に1人が公文式に通っていた」ことや「今の受験社会に公文式がいかに有利に働くか」…など、とにかく公文式をべた褒めする内容が並んでいます。
何を隠そう私も幼稚園くらいから公文に通い、小6の卒業までずっと通い続けてましたので、公文式のシステムや長所・短所はなんとなく掴んでいます。
今回は「子供にはどんな勉強をさせればいいんだろう…」とお悩みの、主に小学生のお子様をお持ちの方を対象に公文式の長所・短所(問題点)・評判・効果…などを考察してみたいと思います。
主に、自分の公文式の経験と、個別指導塾を運営する経験からの意見です。
目次
公文式の考え
どんな教育機関でも、「どんな子供を育てようとしているの?」という考えをしっかり持っていないといけません。この点の公文式ですが、最初の記事を抜粋すると…、
公文式の創始者である公文公(くもん・とおる)は次のように宣言する。
「私は、ほかならぬ私の子どもの大学進学を考えて、この教材を作ったのである。つまり、高校数学へ一直線に進ませる、最も確実な、効果の高い、学習法である。そして、時間的にも経費的にも、最も安上がりな学習法であるということを、私はあえて明言したいのである。平たくいえば、子どもに確実な学力をつけ、大学進学を有利にするために、いちばん得をするのが公文式であるといいたい」
※太字・赤字はこちらの編集
つまりはそもそもの理念として、「大学進学」が念頭に置かれていたということ。「大学で研究できるくらいの学力をつける!」という趣旨だと思いますが、現代流に平たく言うと「受験戦争に有利になる」ということかもしれませんね…。
そんな言い方をすると賛否両論湧き上がると思いますが、基本的には受験を戦う学力のある生徒が自分の道を進んでいける傾向があるのも事実。
公文式の長所
ここからは、公文式に通っていた経験と、個別指導塾を運営している経験から感じる、公文式の長所を書いていきます。
1.受験勉強の力がついた
冒頭の記事を読んでいただければ分かりますが、公文式は計算問題ばっかりです。私も小学校の6年間は通い続けていますが、文章題を解いた記憶が少ししかありません。図形問題も簡単なものしか無かったような。
足し算・引き算から始まり、方程式から関数や微分にいたるまで、ひたすら計算分野を解いたと思います。「なぜこの答えなのか」という高度な理解力を試されるというよりは、「目の前の問題が解けるかどうか」に主眼が置かれていた気がします。(これが公文式反対派の人が多い理由)
ただ、とにかく計算スピードが上がり、試験問題や学校のテストを解く力はつきました。100マス計算というのが流行っていましたが、小学校低学年でも私より速く計算ができる大人は、学校の先生を含めても周囲に一人もいませんでした。
そして気づくことは、学校のテストとか入試問題って大半が計算問題だということです。その計算問題を猛スピードで正確に解く力がついていたので、文章問題にかける時間が大量に余りました。その結果、文章問題も解けました。
- 普通の教育…文章題や図形など、いろいろな問題を解かせる
- 公文の教育…とにかく計算問題を解かせる
2.集中力がついた
試しに、簡単な計算プリントを1ページ、スピードを意識して解いてみてください。人間はスピードを意識しながら計算問題を解いている間は、本当に集中する動物です。没頭という言葉が向いているかもしれません。
公文でのプリントを解く時も、ただひたすら問題に集中して次のプリントに進む…というリズムができていて、通っているうちに集中して勉強する力がついたと思います。
しかも、公文式は基本的に「今日の分を終わらせるまで帰れない」というシステムで、逆に言えば「今日の分を終わらせれば5秒で帰ってもいい」ということなので、恐ろしいほどにスピードを意識して勉強しました。スピードを意識すればするほど、集中力は高まります。
公文に通わなくなって15年経ってますが、ある程度仕事にも集中力を発揮できているのは公文式のお陰かも…?と感じることもあります。もちろん中高生のときも、勉強に対する集中力は周囲の数倍はあったと思います。
特に現代っ子はスマホやら何やらで集中力を阻害される環境がいっぱいですから、公文式で勉強させておくのはいいかもしれませんね。
3.プリントでやる気が出た
公文式は、専用のプリントをひたすら解いて進んでいくスタイル。ノートも使ったことありません。
このプリントを使うスタイルが、とても良かった。
以前、ソフトバンクの孫正義社長が、脳科学者の茂木健一郎さんのインタビューを受ける記事で、以下の発言をなさっていました。
僕は小学校時代に「楽しみながら努力するコツ」を学んだんですよ。
1、2年生のころに物静かなおばあちゃん先生がいましてね、その先生が「何でもいいから1ページ勉強してきたら桜のスタンプをあげます」っていうんです。
クラスの壁に全員の名前が書かれたグラフが貼られていて、それぞれの名前の上に桜マークのスタンプが押されていくんです。
ある日それが「きれいだな~」と思って、「よし、1番になろう!」と決心したんです。それからは、家族が「温泉行くぞ!」と出かけても、「僕は行かん。忙しいけん」とせっせと「あいうえお」とか書いて勉強してね。結果クラスで1番になったんです。
別に何のご褒美もないんですよ。ただそのスタンプが欲しいから勉強する。すると勉強がわかるようになる、と好循環ができたんです。
人間は結構単純で、「やったー!」という瞬間があればやる気がみなぎってきます。公文式でも、上の話の桜のスタンプと同じで、プリントを一枚一枚といていき、ファイルに記録されていくのが嬉しかった思い出があります。
小学校のころはサッカーに陸上クラブに遊びに公文に…と忙しかったので勉強はしたくありませんでしたが、「プリントを進めたい!」という気持ちがギリギリ私を勉強にとどめておいてくれたと思います。
※なので…高倉塾は基本的にノートを使わない、プリント式で授業を行うことに決めました。
(参考:成績が悪い中学生・高校生の勉強法はプリント学習法で決まり。問題集・参考書をそのまま解くよりも、一度プリントにした方が成績は上がります。)
4.絶対的な自信がついた
「絶対的な自信がつく」ということが私にとっての、1番の公文式の「やっててよかった」点でした。
私は幼稚園から公文に通っていて、比較的熱心に勉強したので…たぶん幼稚園で九九くらいは言えていたし、常に4学年くらい上の内容を勉強していました。小学校6年生の頃は高校数学を解けるようになっていました。
(小6で高校数学というと凄そうに聞こえますが、日本中の公文に通っている生徒を見渡せば、そんな生徒は何人もいます。)
プリントで頑張る→どんどん学校の授業より進んでいく→「◯◯君はすごーい」と言われる→嬉しい→もっと頑張る…という理想的な流れが確立されました。
そうなると…、小学校低学年のうちから「たとえどんな難しい問題があっても、自分にできないことはない」という自信が知らず知らずついていたと思います。
中高生の「成績が上がるかどうか」とか「難関校に合格できるかどうか」は、頭の理解力より自信が大切です。自信のある生徒の成績が上がるし、自信のある生徒が難関校に合格します。
その点でも、どんどん先取り学習させてくれて自信を付けさせてくれる公文式は、私にとって非常によかったと思います。今考えると、「とにかく解けるかどうか」を意識して指導されるのは、自信をつけさせる意味があるのかもしれません。
公文式の短所(問題点)
1.「なぜそうなるか?」を学ばない
上述のように、とにかく「この計算問題が解けるかどうか」が大切なので、「これは何でこうなっているんだろう?」という思考力は特に試されません。公文式は結構批判されることも多いようですが、その主な要因がこれです。「これは何でだろう?」という深い思考力を養うことができない公文式では、本当の賢さを作れない…ということですね。
私の意見
ちなみにこれに関しては、「そんな思考力なんて考えず、問題を解きまくるのが最重要」というのが私の意見。
確かに計算問題ばっかりやってたのですが、別に計算問題をやったからといって、思考力が落ちることもありません。公文を真面目に頑張って集中力と計算力が身についていたら、後からいくらでも思考力は磨けます。
そんな思考力なんか気にするより、「先に進む達成感」とか、「勉強に対する自信」を育んだほうがいい影響があるのでは…と思っています。
実際、小学生にあれこれ詳しくて分かりやすい解説をしても、あんまり響きません。抽象的思考をする能力が発展段階だからですね。
それよりも小学生くらいの子には、「できた!!」という達成感の方が必要ですよ。
なので「思考力がつかない」という批判はスルーしていいのではないでしょうか…。
2.放置される時間もある
公文は一人の先生が採点係になり、いろんな生徒の直しなどを指導するスタイル。生徒は先生のところに、できたプリントを持っていきます。
なのでどうしても、「分からないのに先生に聞けない…」という時間が出てくるかもしれません。基本的には気を配って見てくれますが、何も分からず時間がすぎることは、ある程度覚悟しておくべきでしょう。
私が小学校の頃は、すぐに先生に聞けるように先生の隣に座って勉強していました。そういう図々しい生徒なら、うまく活用できるかもしれません…。
3.先に進むことが目的になった
公文でドンドンとプリントを進めていくと、何学年も先に進んで勉強することができます。この先取り学習が、非常に勉強には効果的です。
一方で、先取り学習が進む短所は、「先に進むことが目的となってしまう」こと。例えば小2で小6の内容をやるのは嬉しいのですが、小6の内容が定着していなかったとしても、中1に進みたくて仕方がなくなってしまいます。
先生に「まだ小6のところで曖昧なところがあるから、もう一回小6からやろうか」と言われた時、凄くイヤでした。つまりは「理解できること」よりも「先に進んで優越感に浸る」ということが優先されていたかもしれません。
4.いい教室かどうかは分からない
以前、こんな記事を書きました。
大手の個別指導塾(フランチャイズ)は信頼できない?おすすめの大手個別指導塾は、必ずオーナーの熱意を確認しましょう!
フランチャイズ塾はオーナーによって質のよしあしが激しいので、「同じブランドでもいい加減な教室もある」といった趣旨のブログです。
公文式も同じで、基本的にはフランチャイズ運営。だから公文を開いた先生によって、教室のよしあしがあるかも。
私の場合は…、近所にあった公文式は「後藤先生」という厳しくも褒め上手な女性が教室長だったので、スクスクと育ててもらいました。あなたの近所の公文式も、熱心でいい先生がいますように。
必ず責任者の方とお話して、納得してから入会してくださいね。
親のフォローが大切
とまぁ、ここまで公文式について語ってきましたが…、公文であれ学研であれ日能研であれ、いちばん大切なことは「生徒が自信をつけること」にあります。自信を持った子供は、本当にどこの大学でも合格するし、どんな夢でも叶えていけます。
公文式は小学生が大半だと思うのですが、小学生の時期につけた自信が、大人まで続くと思ったほうがいいかもしれません。自然と「自分はどんな人間か」という考えが育っていく時期ですよね。
だからいくら子供が公文で頑張っても、「あんたはバカなんだから」とか「こんな問題もできないの」とか「◯◯ちゃんは賢いわね。あなたより賢いわ」とか言ってしまったり態度で示してしまえば全てが台無し。
逆に、「このプリント満点だね!頑張ったんじゃん!」とか「疲れてるのに頑張ったんだ!嬉しい!」とか、できた部分に注目した声掛けをしつつ公文に通わせれば、本当に理想の教育に近づくのでは…と思っています。
※褒め方は以下のブログも参考にしてくださいね。
(勉強しても成績が伸びないのはなぜか?「頭はよくなるもの」という考えを持たないまま勉強しても成績は上がりません。)
余談:
通っていた公文の「月刊だより」に、後藤先生が「sodateruのsを取ってみてください。odateruになりますよね。ちゃんとお子さんを褒めてあげてくださいね」と書いていました。小学生ながら、うーんなるほどと思いました。
…というわけで、最高の学習方法は公文式だと思う点。東大生の3人に1人が通っていた公文式の魅力と問題点、評判や効果など…を紹介します。というブログでした。
あくまでも私一個人の意見なので、参考程度に考えてくださいね。