紫野高校のアカデミア科は、他の公立高校よりも面接試験が独特であって、他とは多少色の変わった対策が求められます。受験生ができる具体的な対策方法は別記事に譲り、ここでは今まで実際に行われた面接テーマの詳細をまとめるページとします。
具体的な準備などについては下記ブログ記事を参考にしてください。これを読んだ後に、具体的なテーマについて考えを深めておくと、当日の面接も余裕をもって楽しめるでしょう。

アカデミア科の面接は特殊であるため、前もって考えてきた回答を話すことでは良い対応はできません。現場で論理的に考えたこと、発想したことを恐れることなく熱心に伝えることが大切です。
- 具体的にどんなテーマが与えられるのか
- どんな資料、どんな質問が想定されるのか
- 考えられる模範回答
以上のことを把握しておき、「自分ならどう答えるかな」とイメージして考えておくだけで、当日に焦らず対応できるようになりますし、予想外のテーマが与えられても周囲より抜きん出ることができます。髙倉塾での面接対策においても、この過去テーマと同じ面接を行い、さらに予想課題を作って臨むようにしています。実際の例を参考にして、自分なりの準備をしてください。
配点は500点満点のうちの40点であり、比率は8%。特殊な形式を取る分、普通の面接よりも、受験生の中で大きく点数に差が出ることが予想されます。十分に報告書点のハンディを覆すインパクトがあるので、気合を入れて臨んでほしいと思います。
アカデミア科の面接テーマを表にまとめておきたいと思います。この変遷を見つめながら、面接のテーマをイメージして準備しておきましょう。
面接テーマ | 当日に渡された資料 | 与えられた課題(20分) | |
---|---|---|---|
2023以前 | 「高校で頑張りたいこと」など一般的テーマの英語面接 | – | – |
2023年 (変更発表) | 国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17ゴールを中心にテーマ設定し、面接でそれに基づいた考えを問うことを発表。 | – | – |
2024年 | 京都 | 1. 「京都にゆかりある文化」 2. 「人気観光都市ランキング」 3. 「京都の観光消費額」 4. 「京都の直近10年の人口推移」 | 「京都にゆかりある文化を一つ選び、その魅力を世界に発信する方法を考えよ」「資料2~4の資料のうち、2つまたは3つの資料から読み取れる、京都市の課題について考えよ」 |
2025年 | ? | ? | ? |

2023年は学校側より、「2024年度入学者選抜より、英語面接を廃止して日本語面接に移行する」ことの発表がなされた年です。その面接内容は、国連で採択され、新聞やテレビ、インターネットでもよく聞くSDGsについての内容を強く推されたものでした。
紫野高校からは、具体的な面接テーマや質問の一例が発表されました。その発表内容をまとめます。出典資料はこちら(アカデミア科 令和6年度入学者選抜 個人面接の変更について)。
封筒にはSDGsの17ゴールのうち、5つのゴールが入っています。そのうち最も関心のある2枚を選び、面接に備えて20分で考えをまとめます。

紫野高校から提示された質問例と、そのアドバイスです。
「選んだ2枚と、なぜその2枚を選んだか教えてください。」
アドバイス:例えば5(ジェンダー平等)と12(つくる責任、つかう責任)を選んだ場合、「人権学習でLGBTQの当事者の方の話を聞いたから」「中学校に衣類のリサイクル・リユースBOXが設置されたから」などのように、それらを選ぶきっかけとなった自分自身の体験を語るなどの回答が可能でしょう。
「選んだ2枚について、あなたの周囲や地球上でどのような問題が起こっていますか。それぞれ一つずつ例を挙げてください。」
アドバイス:例えば5(ジェンダー平等)と16(平和)を選んだ場合、5については今年6月に日本の国会で成立した『LGBT理解増進法』の課題や、日本のジェンダー・ギャップ指数が先進国の中で最低レベルであること、16についてはウクライナ情勢や香港での言論統制など、日頃ニュースなどに接する中で印象に残っている問題や事件を挙げてもらうことができるでしょう。
「選んだ2枚を関連付けて、あなたが高校で考えたいことを話してください。」
アドバイス:例えば5(ジェンダー平等)と12(つくる責任、つかう責任)を選んだ場合、性自認をファッションで表現したい人と、リユースの衣類をマッチングする取り組みなど、自由で柔軟な発想でアイデアを語ってください。
高校側から提示された想定から分かるように、SDGsに関する知識や自身の経験から話せることを問うであろうことが示されていました。このために割とユニセフのサイトを見てあらかじめ考えをまとめておく、などの対策をして臨んだ受験生が多くなりましたし、実際に塾でもそのような指示を出していました。
面接のためにインターネットや本で調べたことではなく、実際に自分の日常生活で見たこと、感じたこと、考えたことを絡めて話せるようになることが大切であるので、知識と経験の交差点を考え、探し出して準備することが大切でした。

2024年、日本語面接が始まった最初のテーマは【京都】でした。コロナ以降で進む観光客数の増加、2023年3月に実行された文化庁の京都移転など、時事的要因が重なったことが理由であるようです。




準備室にて、配布された4つの資料を眺めながら、下記の課題について考えます。与えられた時間は20分間です。
①資料1で示した京都にゆかりのある文化のうち、1つを選び、その魅力を世界に発信する方法を考えてください。
②資料2~4の3つの資料から読み取れることを考えてください。面接では、これらの資料を関連づけて見えてくる近年の京都市の課題について質問します。
課題はこの2つであり、20分間でこれらについて考え、メモに自分の考えをまとめます。①については自分の考えを伝えるのみであり、②についても、20分あれば正確に資料の意味を読み取り、自分の考えをまとめることができそうです。
面接室では、準備室で渡された課題について質問されます。面接は5分間なので、そんなに深く切り込まれることはないと思って良いです。
実際にされた質問と、こちらで考えた回答例を添えて記載します。
資料1に示した京都にゆかりのある文化のうち、あなたが世界に発信したいと思うもの一つと、それを選んだ理由を答えてください。
回答例1:京野菜です。親戚が畑を持っており、よくもらった野菜を使った料理が食卓に並ぶことがあり、私にとって馴染みがあります。和食のヘルシーなところが海外の人たちにも人気だと聞いていますし、私がその良さをもう少し学べば、自分の言葉で世界の人に伝えられると思います。
回答例2:茶道です。以前に茶道の体験をしたことがありますが、普段では絶対に味わえないような、一つの儀式として完成された厳かな雰囲気が印象的でした。日本の文化に関心ある外国の人にこの体験をしてもらえれば、日本の文化や大切にしていることを、一番直接的に実感してもらえるだろうと思うからです。
回答例3:風神雷神図屏風です。私は今の人の感覚からすると、風神と雷神の顔や表情は少し笑えるくらい面白い気がします。対策がなされていない昔では命に関わるような雷や大雨、風などの自然災害をこのように表現するのは、日本人の自然に対する親近感を表しているように感じるからです。
風神雷神図屏風とか源氏物語とか、教科書で読むしかないような事例は、中学生にとってリアリティを持ちにくく、血の通った言葉にすることは難しいかもしれません。身近そうな、京野菜とか茶道、祇園祭とかを選んだほうが話しやすかったと思います。
「質問の意図を汲んだ回答になっているかどうか」が採点ポイントになりますから、それを選んだあなた独自の理由を伝えるように意識しましょう。理由が知的だとか、驚くような視点がある、等は気にせず、自分の体験や考えから話すようにしてください。
アカデミア科は海外修学旅行に行きます。現地で交流する高校生に、あなたなら、選んだ文化の魅力をどのように伝えますか。
回答例1:京野菜を使った和食は味が濃いわけではないので、海外の高校生にその美味しさが伝わるかは正直言って分かりません。なので、ヘルシーであったり、油分も少なくて栄養バランスが良いことなど、健康や美容によいところを強調して説明すると現地の高校生にも関心を持ってもらえると思います。栄養素について、他の食事と比べて良いところを表や図で説明したいです。
回答例2:私が茶道に関心を持って体験してみた理由は、お茶とお菓子が食べられる、という単純なものでした。なので、現地の高校生にも、カラフルな和菓子や抹茶の画像を見せて、最初は味のイメージなどに関心を持ってもらうと受け入れてもらいやすいと思います。その後に、歴史的ルーツや実際の雰囲気、体験で私がどう感じたのかの本質を伝えようと思います。
回答例3:風神雷図屏風は、人間が恐れるものの描き方が独特で面白いところだと思います。金剛力士像など怒りの表情をしているものから大仏のように穏やかな表情をしているものまで、その描き方の移り変わりや特徴を時代ごとにまとめた資料を作れば、現地の高校生にとっても昔の日本人の感覚が掴みやすいのではないかと思います。
もちろん「どのように伝えるか」だけでなく、そう考えた根拠も合わせて説明することが大切です。簡単なものでいいです。
資料2~4のうち2つまたは3つを関連付けて、近年の京都市の課題について考えたことを話してください。
回答例1:資料2や資料3を見ると、京都市は海外の人からも注目度が高く、観光でお金を使ってくれています。にも関わらず、資料4で分かるように、大切な若者や子育て世代がどんどん京都市から離れていくことは矛盾を感じます。観光によって得たお金が、うまく京都市民が過ごしやすいように還元できていないことが大きな問題だと思います。
回答例2:資料2や資料3で、京都市は世界でもトップクラスに観光客にとって魅力的であることが分かります。それは、京都市が条例などによって、歴史的な景観や文化財を守るまちづくりをしているからだと思います。しかし京都市から離れる人が増えているということは、京都市民はそれを望んでいる人ばかりではないのかもしれません。歴史的な景観を守ることと、現代の人が住みやすいような近代的なまちづくりのバランスを、もっと上手く取ることが課題だと感じました。
この質問が受験生の中でも最も差が出るところでありました。最初の質問である「あなたが発信したい京都の文化」に関しては、十人十色の回答が考えられるものであり、2つ目の質問も、とにかく受験生が根拠を持った考えを提示することができれば、内容自体はそこまで深く問われるものではありませんでした。
ただ、資料4「京都市の直近10年の人口推移」は一見すると文化とは関わりのないネガティブなデータであって、これに関しては「なぜこの資料が登場しているのか」について考えを及ばせる必要があります。
少しだけ発想力や思考力が試されるような質問でしたが、資料2と資料3がポジティブな資料で、4だけネガティブな資料になっているので、そのギャップについて考えることができた人は自信を持った話ができたのではないかと思います。資料4にしっかり着目し、「それが他のポジティブな資料と並んでいる意味は何か」を考えるだけで、かなりスムーズにアイディアが出てきますね。
前年の予告のSDGs全面押し出しからは意表をついたテーマとなりましたが、難易度はグッと下がっているので準備をしてきた人からすると余裕を持って答えられたと思います。
髙倉塾からの受験生も、ガチガチに準備してきたから割と良い意味で拍子抜けしながら、思う受け答えができて楽しんで面接を受けられたようです。準備はしすぎるくらいにできると良いですね。