京都府の公立高校には、誰もが憧れる難関コースがあります。
- 堀川高校 探究学科群
- 嵯峨野高校 京都こすもす
- 西京高校 エンタープライジング
- 桃山高校 自然科学
- 山城高校 文理総合
- 紫野高校 アカデミア
- 鳥羽高校 グローバル
- 塔南高校 教育みらい
- 京都工学院高校 フロンティア理数
など、これらは普通科よりも合格が難しく、入学後の予算もある特別コースです。当然、進学実績も魅力的な大学が揃うため、「普通科よりも、さらにレベルの高い環境で頑張りたい」と考える生徒が受験します。

これらは、京都府の資料では「その他の専門学科」と分類されており、普通科よりもより高度で専門的で、独自の学習カリキュラムを持っています。
目次
京都府の公立高校は、普通科では以下の3つの選抜がありました。
前期 | 中期 | 後期 | |
---|---|---|---|
特徴 | 不合格が前提 | 多くの合格者が出る | 定員が余った高校のみ |
受験日 | 2/16頃 | 3/8頃 | 3/24頃 |
合格発表 | 2/24頃 | 3/17頃 | 3/28頃 |
普通科を受験する場合は、主に中期までもつれます。
しかし上で挙げた専門学科を受験する場合は、前期選抜で全てが決定します。前期選抜に不合格なら、もうチャンスはありません。
- 普通科… 前期選抜と中期選抜、2回チャンスがある(ほぼ中期がメイン)
- 専門学科… 前期選抜で全てが決まる
受験日 | 2/16頃 | ||
合格発表 | 2/24頃 |
以下の表からも、前期選抜で定員の100%を合格させることが分かります。


普通科と異なり、専門学科では各校独自の教育カリキュラムを打ち出し、よりハイレベルな学びを提供し、生徒の能力を最大限に引き出すことを目的に設置されています。したがって、各校ともに生徒の豊かな知的好奇心を求めています。
当然、偏差値や大学進学実績も普通科よりも充実することとなります。
高校/コース名 | 偏差値 | 普通科(中期) 偏差値 |
---|---|---|
堀川 探求学科群 | 73 | 66 |
嵯峨野 京都こすもす 自然科学 | 72 | 61 |
嵯峨野 京都こすもす 共修 | 71 | – |
西京 エンタープライジング | 71 | – |
桃山 自然科学 | 70 | 60 |
山城 文理総合 | 65 | 58 |
紫野 アカデミア | 66 | 55 |
鳥羽 グローバル | 53 | 56 |
塔南 教育みらい | 57 | 49 |
工学院 フロンティア理数 | 51 | 48(プロ工) |
普通科の前期選抜は定員の30%しか合格しないため、ほとんどの高校の倍率が3~5倍となりました。
一方、専門学科は偏差値も普通科より高くなりますが、倍率は1.5~3倍ほどに落ち着きます。
高校/コース名 | 2022 倍率 | 2021 倍率 |
---|---|---|
堀川 探求学科群 | 1.83 | 1.53 |
嵯峨野 京都こすもす 自然科学 | 1.80 | 2.04 |
嵯峨野 京都こすもす 共修 | 1.93 | 1.88 |
西京 エンタープライジング A1 | 1.95 | 2.14 |
西京 エンタープライジング A2 | 0.94 | 0.81 |
桃山 自然科学 | 2.03 | 1.85 |
山城 文理総合 | 2.55 | 2.95 |
紫野 アカデミア | 1.51 | 1.25 |
鳥羽 グローバル | 1.60 | 1.00 |
塔南 教育みらい | 1.70 | 1.23 |
工学院 フロンティア理数 | 1.08 | 0.88 |
しかしこれは当然、「専門学科は合格しやすい」ということを意味しません。学校評定でいえばオール5に近い生徒が受験することも珍しくないし、受験生のレベルが高く受験の意思も固いため、倍率に左右されるような甘い戦いではありません。
専門学科を受験する生徒は特に倍率を気にすること無く、自分の全力をぶつけることだけを考えましょう。倍率を見て安心したり、逆に悲観することは全く無意味です。

専門学科の選抜システムは、普通科の前期選抜と同様に、
- 学力検査
- 報告書
- 面接 (Or 小論文)
などの数字を元に合格者を決定します。
堀川高校の探求学科群の要項を参考に説明します。

学力検査の◎印で分かるように、普通科とは異なり、各コースで難しい独自試験が準備されています。上に挙げた堀川高校の探求学科群の場合は、525点満点を配分し、上位から合格者を取っていく仕組みです。
各専門学科の配点比率を以下の表にまとめました。
国語 | 数学 | 英語 | 理科 | 社会 | 報告書 | 面or小 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
堀川 探求 | 100 | 100 | 100 | 50 | 50 | 100 | 小論25 | 525 |
嵯峨野 こすもす | 100 | 100 | 100 | 50 | 50 | 100 | 面接25 | 525 |
西京 エンプラA1 | 100 | 150 | 150 | 100 | 50 | 150 | 小論50 | 750 |
西京 エンプラA2 | 80 | 120 | 120 | 80 | 40 | 150 | 面接50小論50 陸上60※1 | 750 |
桃山 自然科学 | 100 | 100 | 100 | 100 | – | 100 | 面接25 | 525 |
山城 文理総合 | 100 | 100 | 100 | 50 | 50 | 100 | 面接25 | 525 |
紫野 アカデミア | 120 | 120 | 120 | – | – | 100 | 面接40 | 500 |
鳥羽 グローバル | 100 | 100 | 100 | – | – | 100 | 小論50 | 450 |
塔南 教育みらい | 100 | 100 | 100 | – | 専門※250 | 100 | 面接50 | 500 |
工学院 フロンティア | 100 | 100 | 100 | 100 | – | 150 | 面接30 | 580 |
※2…テーマについて「書く」+「発表する」
毎年あまり変化することはありませんが、上記はあくまでも令和4年度時点での数値です。やはり普通科の前期選抜に比べると、総合力が試されることが分かるはずです。
専門学科入試の「学力検査」

専門学科は、各高校で独自試験を準備して実施するため、普通科以上に、時間と熱意をかけた入試対策が求められます。
- 普通科… 全ての公立高校で同じ入試問題
- 専門学科… 各校の独自入試問題
普通科のような、京都府の全高校での共通試験はとてもシンプルな対策で突破できますが、専門学科では個別の入念なトレーニングを行うことが普通です。
当然、各校ともに難易度の高い問題を揃えているため、普通科の過去問はしっかりクリアした上で、応用も多い専門学科対策に乗り出す必要があります。とてもやりがいのあるハードルです。
専門学科入試の「報告書」
普通科の前期選抜では、報告書の合計は135点満点でした。全て最高の「5」であった場合、3年間合計は135となるからです。
評定 | 数学 | 英語 | 理科 | 社会 | 国語 | 音楽 | 美術 | 保体 | 技家 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1年学年末 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 45 |
2年学年末 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 45 |
3年学年末 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 45 |
評定 合計 | 135 |
しかし専門学科の場合(西京エンプラ、工学院フロンティアを除く)は、「報告書」の満点が100点にまで圧縮されていることが分かります。
国語 | 数学 | 英語 | 理科 | 社会 | 報告書 | 面or小 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
堀川 探求 | 100 | 100 | 100 | 50 | 50 | 100 | 小論25 | 525 |
嵯峨野 こすもす | 100 | 100 | 100 | 50 | 50 | 100 | 面接25 | 525 |
西京 エンプラA1 | 100 | 150 | 150 | 100 | 50 | 150 | 小論50 | 750 |
西京 エンプラA2 | 80 | 120 | 120 | 80 | 40 | 150 | 面接50小論50 陸上60 | 750 |
桃山 自然科学 | 100 | 100 | 100 | 100 | – | 100 | 面接25 | 525 |
山城 文理総合 | 100 | 100 | 100 | 50 | 50 | 100 | 面接25 | 525 |
紫野 アカデミア | 120 | 120 | 120 | – | – | 100 | 面接40 | 500 |
鳥羽 グローバル | 100 | 100 | 100 | – | – | 100 | 小論50 | 450 |
塔南 教育みらい | 100 | 100 | 100 | – | 専門50 | 100 | 面接50 | 500 |
工学院 フロンティア | 100 | 100 | 100 | 100 | – | 150 | 面接30 | 580 |
したがって、専門学科の入試における「自分の報告書点数」を把握するには、100点満点になるように圧縮しなければなりません。合計数字に100/135 (135分の100) をかければ正確に圧縮できますが、電卓では単純に0.74(≒ 100÷135)をかければほぼ正確な数字が出ます。

もし自分の報告書合計が103であれば、0.74をかけてみてください。専門学科入試における報告書点数は、76点であることが分かります。
評定 | 数学 | 英語 | 理科 | 社会 | 国語 | 音楽 | 美術 | 保体 | 技家 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1年学年末 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 3 | 4 | 3 | 34 |
2年学年末 | 4 | 4 | 4 | 4 | 3 | 4 | 4 | 3 | 3 | 33 |
3年学年末 | 5 | 4 | 4 | 4 | 4 | 3 | 4 | 4 | 4 | 36 |
評定 合計 | 103 | |||||||||
圧縮後 | 76 |
0.74をかけると少数が出ることが多いですが、四捨五入して報告書点数を概算してください。
専門学科入試の「面接」や「小論文」

「前期選抜実施要項」を見ても明らかであるように、普通科よりも専門学科の面接のほうが気合の入った説明が書かれています。
令和4年度入試における各高校の面接や小論文の具体的内容を、以下の表にまとめます。
高校/コース | 検査方式 | 配点比率※ | 検査時間 | 検査内容 |
---|---|---|---|---|
堀川 探求 | 小論文 | 4.8% | 40分 | 400字程度。提示された課題文から情報を読みとり、論の展開・構成や主張を適切に把握するとともに、論理的に表現する力をみる。 |
嵯峨野 こすもす | 面接 | 4.8% | 10分 | 集団面接。「京都こすもす科自己PRシート」をもとに、本校への志望理由、将来の夢や目標等について口頭で答える。 |
西京 エンプラA1 | 小論文 | 6.7% | 40分 | 朗読された文章を聞き、その内容を正しく受け取り、自分なりの意見を記述によって表現する力をみる。 |
西京 エンプラA2 | 双方 | 13.3% | 計45分 | 面接…個人面接を実施する。志望動機や高校生活に向けた決意等を問う。5分 小論文…A1と同じ。40分 |
桃山 自然科学 | 面接 | 4.8% | 15分 | 集団面接。志望動機や入学後の抱負等についての面接者からの質問に口頭で答える。 |
山城 文理総合 | 面接 | 4.8% | 10分 | 集団面接。面接者からの質問に口頭で答える。本校文理総合科の「求める生徒像」で示した内容に関する目的意識や意欲・適性をみる。 |
紫野 アカデミア | 面接 | 8% | 5分 | 個人面接。英問英答を行う。個人カードに書かれた英文を黙読しその後音読する。英文の内容について、検査官の英語の質問に対し、英語で答える。英文の内容について、自分の感想・意見などを理由をそえて英語で答える。出題する英文は、中学校で学習した範囲の単語を用いる。 |
鳥羽 グローバル | 小論文 | 11% | 50分 | 300字程度。 <社会科的内容>資料や図表等を的確に読み取り、考察した内容を論理的に説明する能力をみる。 <理科的内容>実験・観察等から得られる情報を、科学的に分析・統合して、表現する能力をみる。 |
塔南 教育みらい | 面接 | 10% | 10分 | 個人面接。志望動機や高校生活への決意等を聞き取る。 |
工学院 フロンティア | 面接 | 5.2% | 10分 | 個人面接。中学校での活動や志望動機、高校生活への抱負等を聞き取る。 |
上記の表のとおり、各高校ともに、面接や小論文による配点は全体の5%から10%に過ぎず、それだけで合否を決定的に左右する力はありません。したがって面接や小論文対策は、闇雲にずっと悩んで対策する必要はありません。最低限のコツを把握した上で、堂々と自信を持って行えるように訓練することだけを意識してください。
「◯◯高校の専門学科、◯◯科に入りたい!」と思った生徒は、「でも自分の実力では難しいだろうから、諦めよう」などと思ってはいけません。「本当に行きたいと、少しでも思ったのなら、絶対にチャレンジするべきだ」が高倉塾からの答えです。
それには、2つの明確な理由があります。
- 過去問も、対策すれば必ず解けるようになること
- 専門学科受験にはリスクがない
「◯◯高校の◯◯科に入りたい」と考えた時に、早い段階で赤本などの過去問をペラペラとめくる人がいます。目標に向かって一歩踏み出した証拠であり、これ自体は素晴らしいことです。
しかしほとんどの場合、ペラペラ眺める過去問はとても難しく、今の自分では解けそうにない問題がズラリと並んでいることでしょう。それを見て、すぐに自信を失い、諦める人がいます。

それも当然で、それらの問題は、中3の2月にやっと解ければよい問題たちです。初めて過去問を見た段階で解ける人間など、ほとんどいません。
さらに、訓練を積んだ中3の2月時点でさえ、多くの受験生は半分くらいしか解けません。なぜなら難関の専門学科においては、だいたい5割くらいの正答率でも十分合格圏に入るからです。
とにかく、「ここに入りたい」と思ったら腹をくくってチャレンジしてみることが、合否に関わらず自分を成長させます。
「専門学科は難しいから、諦めて前期は普通科を受験しよう」と考える人もいます。
しかし、諦めずに専門学科を受験することをおすすめします。なぜなら幸いなことに、専門学科受験には全くリスクがないからです。

上の図のように、前期選抜は私立高校入試の直後にあります。前期選抜で専門学科を受験した場合、もう前期選抜で普通科を受験することはできません。
しかし専門学科で惜しくも不合格になってしまった場合でも、3月にある中期選抜で普通科を受験できます。普通科では定員の30%しか合格させないため、前期選抜は専門学科と同じくらい厳しい戦いになりますから、普通科受験の本番はあくまでも中期選抜です。普通科の前期選抜を受けなかったからと言って、特に不都合はありません。
したがって、「前期選抜で専門学科を落ちてしまった。あのときは普通科を受験しておけばよかった….」という事態は起こりえません。「前期には専門学科ではなく、普通科を受験しておけば合格したかもしれない」と思うのならば、中期はなおのこと100%合格できるから何の心配もいりません。
むしろ、専門学科を真剣に目指して勉強していたのなら、中期選抜の試験問題など簡単に見えることでしょう。
専門学科受験にはリスクがありません。チャレンジしたい人は、悔いのないよう思い切ってチャレンジしてください。