高校受験にしろ大学受験にしろ、「偏差値」という言葉は切り離せません。私たちは、小さい頃から偏差値という言葉を聞かされて生きてきました。
しかしそこで得た偏差値の知識は、「高けりゃ凄い!!!」くらいのもので、正確な感覚をつかむことなく大人になってしまいました。私たちはイマイチよう分からんものに一喜一憂していたということです。
なぜ偏差値が分かりにくいかというと、「偏差値って何?」と聞くと、「偏差値の計算方法はだね……」と言って10分間分かりにくい説明を受けてきたからです。偏差値の計算方法は案外複雑です。でもそんなことは一般人には何の役にも立たないのでどうでもいいです。
偏差値は考えるものではなく、感じるものなのです。
これからは偏差値を直感で理解しましょう。直感で理解できれば、親御さんも「偏差値を10上げる」にはどれくらい頑張ればいいのか、我が子にとって無理なのか頑張ればできそうなのか、分かりやすく判断できると思います。
ということで今回は偏差値の感覚をピッタリと把握して活用することが目的です。そのため、私たち全員に馴染み深い「身長」を使って偏差値について考えてまいります。
目次
身長で考える偏差値の基本
平均身長で偏差値50だ!
まず絶対に基礎知識として知る必要が有ることは、「ある試験でちょうど平均点をとったとすれば、あなたは偏差値50になる」ということです。なので偏差値50ということは、特に凄くもなけりゃ悪くもない、何とも言えない結果だということです。
偏差値50は平均点なので分かりやすいのですが、偏差値40や、偏差値60となった途端、凄さが分かりにくくなってしまいますよね。偏差値50に比べ、急に感覚がつかめなくなってきます。だから我々は身長に置き換えないといけないのです。
厚生労働省の身体状況調査によると、日本の成人女性の平均身長は、約158.3cmです。160cm弱くらいあれば、平均的な身長だということです。周りの女性を見渡しても、大体そんなもんでしょう。158cmでは「背が高いな」とは言えませんし、「背が低いな」とも言われません。
ということは、女性の身長でいうと、平均の158.3cmだった場合は、偏差値が50になります。
8割の成人女性の身長は153.1cmから162.5cmです。
厚労省の身体状況調査ではもう一つ面白い数字も出ていて、それは「標準偏差」です。標準偏差とは「標準的な偏り」ということです。
分かりやすく関西弁で言うと、「平均身長が158.3cmていうても、身長は人それぞれちゃうんかいな。だいたい身長何cmから何cmの人が多いねん」ということです。
この答えが標準偏差になるわけですが、日本の成人女性の場合、上記厚労省調査で「標準偏差は5.2」というデータが出ています。
要するに、「成人女性の身長は、平均の上下5.2cmくらいの人が非常に多いよ。」という意味です。平均が158.3cmですから、それより下に5.2cm、上に5.2cmの範囲の人が非常に多いし、よくあることだよね、ということになります。下は153.1cm、上は163.5cmですね。
大体7~8割くらいがこの範囲で、この範囲の身長ならば「よくある身長」と言ってもいいことになります。153.1cmでも珍しく低いわけでもないし、163.5cmでも珍しく高いわけでもありません。標準的な範囲だという評価ができます。
分かりやすく図にすると、以下のようになります。
153.1cmより低くなって初めて、「少し低めの身長だな」と言えますし、163.5cmより高くなって初めて「ちょっと高いじゃん」と言えますね。
偏差値の10の違いは、標準偏差一つの違いだ!
先ほどの分かりやすい図に偏差値の数字を入れると、こうなります。
※図中の台詞は省略いたしました。
「偏差値が10違う」というのは難しく言うと「標準偏差ひとつ分違う」ということなのですがそんなことはどうでもよくて、ポイントは「身長153.1cmは、偏差値で言うと40だ」というところです。153.1cmは「よくある標準的な身長」と言ってもよいわけですから、偏差値40はギリギリで「よくある成績」と言えます。いやーよかったね。でもギリギリだよ。
逆に+5.2cmの163.5cmは、身長の偏差値60です。模擬試験で偏差値60というと結構いい成績なのですが、これもまたギリギリで「よくある成績」と言えることになります。偏差値60とったって凄くないんだぞ。精進が必要です。
ということで、これからは「偏差値60」と聞いたら、「身長163.5cmの成人女性くらいなのね」と考えればどの程度の成績なのかイメージを掴むことができます。まぁ高いけど、めちゃくちゃ高いわけではないですよね。このイメージこそ、偏差値を感じるということです。
同時に、「偏差値40」と聞いたら、「あらまぁ〜、身長153.1cmの成人女性なのね」と思いましょう。まぁ低いけど、よくある範囲での低さですね。偏差値を感じてきましたか。
直感でわかる偏差値表
偏差値 | 成人女性身長 | 成人男性身長 | 順位目安 |
---|---|---|---|
80 | 173.9cm | 189.8cm | 上位0.1% |
75 | 171.3cm | 186.8cm | 上位0.6% |
70 | 168.7cm | 183.8cm | 上位2.3% |
65 | 166.1cm | 180.8cm | 上位6.7% |
60 | 163.5cm | 177.8cm | 上位15.9% |
55 | 160.9cm | 174.8cm | 上位30.9% |
50 | 158.3cm(平均) | 171.8cm(平均) | 上位50%(平均) |
45 | 155.7cm | 168.8cm | 下位30.9% |
40 | 153.1cm | 165.8cm | 下位15.9% |
35 | 150.5cm | 162.8cm | 下位6.7% |
30 | 147.9cm | 159.8cm | 下位2.3% |
標準偏差 | 5.2cm | 6.0cm |
男性の身長も入れてみました。女性の身長173cmって高いですけど、1000人に1人の希少レベル!!意外。
これから「偏差値が55だったよ」と言われたら、大体この表を見て凄さを確認してください。成人女性なら160.9cmだし、成人男性なら174.8cmです。「まぁ少し高いくらいかな」くらいに思っておきましょう。
また、偏差値50も偏差値55も、158.3cmと160.9cmの差です。こんなもんパッと見では全然見分けがつきません。朝測ったら160cmでも、夜にもう一度測ったら軟骨がすり減っていて158cmになってることはきっとよくあります。この程度の違いしかないからこそ、偏差値の数字に一喜一憂するなとよく言われるのです。
偏差値53と偏差値55なら159cmと160cmの違いくらいなので、誤差の範囲です。「偏差値が2上がった」とか「下がった」など考えるべきでなく、「同じ成績だった」と考えるべきだということが分かります。2下がったくらいなら「軟骨がちょいすり減っただけ」と思っとけば問題ありません。
偏差値社会は悪いのか
以上から分かったように、「偏差値が1上がったよ」とか「5上がりました」「下がりました」などほぼ無意味で、喜んで優越感に浸ったりブルーな気分になったりするのは非常にアホらしいということになります。まぁ喜ぶぶんにはいいわ。やる気が出てくるから。でもへこむのはやめましょう。偏差値を過大評価してはいけません。正直その気になれば偏差値を10以上上げるのは対策をやれば達成可能ですし、勉強によって継続する集中力がついた事実こそ、将来お金になるものです。
逆に、よく「偏差値で成績を決めつけるのはよくない」とか「偏差値で学力を決めつける社会はよくない」という意見を聞きますが、それも偏差値を過大評価しすぎです。偏差値って学力はもちろん、身長であれ体重であれ何にでも適用できるもので、少しの数字違いは誤差程度です。ただ単に計算して出しただけの数字です。特に深い意味はないのです。
さてそれくらいの気持ちで、志望校に必要な偏差値を目指していきましょう。実際に模擬試験で直前までE判定(ほぼ不合格判定)だったのに合格する人も多いようなので、偏差値ってそんなものですね。
明治時代の日本の立派な外交官に小村寿太郎という人がいましたが、彼は身長が156cmしかありませんでした。現代の身長偏差値でいうと25くらいですが、明治時代の身長偏差値でもかなり低かったと思います。
「小村さんは本当に小さいですなぁ」と言われた時、小村寿太郎は「ハハハ、大丈夫です。日本は小さくても強い国でしょう」と言ったそうです。
小村のように周りとの差を気にせず、勉強に打ち込むべし。
※背は低かったが、猛烈に勉強して常にトップクラスの成績だったため、留学中のアメリカでも尊敬を集めていた。